予知保全システムの導入で自社の課題を解決する方法の解説

予知保全

生産設備の生産効率向上やメンテナンス費用の削減を目的として、予知保全システムの導入を進める企業が徐々に増えています。当記事をご覧の方の中にも、導入を検討している方もいるでしょう。

しかし、予知保全システムは検討しなければならない項目が多く、スムーズに導入を進めることは簡単ではありません。

そこで今回は、予知保全システムを導入する際の流れや課題について解説します。導入を検討している方は、参考にしていただけたらと思います。

この記事では予知保全システムについて深堀りした内容を紹介します。もし、そもそもの予知保全の概要について把握されていない方は、予知保全に関する情報をまとめていますので、ぜひこちらの記事をご覧ください。

目次

予知保全システムを導入する際の流れ

予知保全

自社の工場に予知保全システムの導入をしたくても、実際には何から手を付けていけばいいか分からないことがあります。予知保全システムを導入する際には、以下の5つのステップで導入を進めていくと、検討漏れがなくなり、失敗するリスクを減らせます。

  1. 予知保全システムの導入によって解決したい課題の選定
  2. 課題を解決できる予知保全システムの構成を検討
  3. 予知保全を行うために必要なデータの取得
  4. 小規模に始めて効果を確認しつつブラッシュアップ
  5. 予知保全の効果を確認後に本格的なシステムを構築

ステップごとに、重要なポイントについて解説します。

予知保全システムの導入によって解決したい課題の選定

まずは、予知保全システムを導入することで解決したい課題を選定します。すでに課題が明確である場合には問題ありませんが、予知保全システムの導入指示が先行している場合には、課題の選定が重要です。

自社の工場で生じているさまざまな課題を抽出し、その中から予知保全システムを導入することで解決できるものを整理します。例えば、設備の故障やメンテナンスによる生産効率の悪化、保全人員の不足などの課題があれば、予知保全システムの導入により解決できる可能性があります。

課題の解決が可能な予知保全システムの構成を検討

解決すべき課題を明確にしたら、次はその課題を解決できる予知保全システムの構成を検討します。予知保全システムは以下のように、さまざまな要素によって構成されているため、それぞれの要素を適切に選定する必要があります。

  • センサ(振動、電流など)
  • アンプ
  • 接続用ケーブル
  • IoTゲートウェイ
  • クラウド
  • 予知保全アルゴリズム
  • 表示端末(PC・スマートフォン・タブレット端末)

導入する予知保全システムの構成要素を決めたら、予知保全システムを構築する際に必要な費用と、課題を解決できた際の効果について、費用対効果の観点で確認します。もし、費用に見合う効果が得られない場合には、予知保全の対象を限定や構成要素の再検討が必要です。

構成要素の検討や効果の見積もりについて、自社で実施するのが難しい場合には専門家に相談するといいでしょう。

予知保全を行うために必要なデータの取得

予知保全システムの重要な構成要素であり、予知性能を大きく左右するのが予知保全アルゴリズムです。高精度な予知保全アルゴリズムを開発するためには、予知保全システムを導入する対象の設備に関する大量のデータ(振動、温度、電流、動作情報など)が必要となります。

生産設備に関するデータであればどのようなものでもいいわけではありません。予知保全システムを導入する目的に照らし合わせて、課題を解決するためにはどのようなデータをそろえる必要があるのかを明確にします。

すでに必要なデータがそろっていれば問題ありませんが、データが不足している場合には速やかに追加データの取得を進める必要があります。取得したデータを元に、予知保全アルゴリズムを構築します。

小規模に始めて効果確認・ブラッシュアップ

予知保全システムを構築する際には、初めから完成形を目指して大規模に構築するのではなく、小規模に始めるといいでしょう。最初から大規模に構築してしまうと、十分な効果が得られなかったりシステムに不備があったりした場合、大きな損失が生じることがあります。

まずはスモールスタートで、想定した予知保全システムで故障やメンテナンスタイミングの予知が可能か、精度が十分かなどの確認を行います。もし課題が発生しても、短時間で課題の特定や対策を行えるため、スムーズなブラッシュアップが可能です。

本格的に予知保全システムを構築する前に、課題出しとブラッシュアップ(改良)が完了している状態になるため、初めから完成形を目指した場合に比べて失敗したときのリスクを抑えながら、精度の高い予知保全システムを構築できます。

予知保全の効果確認後に本格的なシステムを構築

小規模な予知保全システムで、動きの確認やブラッシュアップが完了したら、完成形を目指して本格的なシステムを構築し、運用を開始します。

実際には、規模を大きくすることで初めて見えてくる課題もあります。

それらの課題についても随時ブラッシュアップを行いながら、狙い通りの効果が得られているか検証を行い、得られた結果を他の生産設備や自社工場に展開することで、予知保全システムの導入による効果を最大化できます。

予知保全システムを構築する際の課題

メンテナンス

予知保全システムはうまく活用できれば、生産性や品質の向上を実現できますが、予知保全システムを構築する際にはさまざまな課題が生じます。代表的な課題を4つ紹介します。

  • 故障の予測につながる要因が見つけられない
  • 予知保全を行うためのデータ量不足
  • さまざまな条件におけるデータの種類不足
  • 予知保全システムへの費用対効果が判断できない

故障の予測につながる要因が見つけられない

生産設備の故障を予測するためには、故障した後にその原因を解析した結果だけでは不十分です故障をする前に、故障につながった要因を把握する必要があります。

生産中にさまざまなデータを取得し続け、故障が発生するまでの過程でどのデータがどのように変化していくのかを確認し、故障のメカニズムを明確にすることが重要です。これは、故障の発生後に原因解析するのとは、異なるアプローチとなります。

想定しているデータの変化が故障につながっているのかなどを解析するのは、故障が発生してからその原因を明確にするのに比べると、難易度が上がります。予知保全システムの根幹となる部分ですが、課題となりやすい部分でもあります。

予知保全を行うためのデータ量不足

予知保全システムを構築する際には、機械学習アルゴリズムを用いることが多くなっています。機械学習アルゴリズムが精度よく学習を行うためには、豊富なデータが必要となりますが、データが十分にない場合があります。

例えば、そもそも必要なデータを普段から収集していなかったり、センサの設置方法が悪く、取得したデータが使えなかったりすることが原因です。

予知保全システムの導入を検討し始めた段階で、現状を把握する意味でも、早い段階からさまざまなデータを取得しておくといいでしょう。

さまざまな条件におけるデータの種類不足

データ量が十分にあったとしても、その種類が限られている場合には予知保全システムを適切に構築できない場合があります。例えば、正常時のデータしかない場合には、正常ではない状態の予測を行う予知保全システムの精度を高くするのは困難です。

機械学習には、アルゴリズムに対して正解となるデータを与える「教師あり学習」と、正解を与えない「教師なし学習」があります。予知保全システムで高い予測精度を実現するためには、故障時の状況に応じたデータが与えられる教師あり学習が望ましいでしょう。

一方で、そもそも製造業の場合にはそれほど頻繁に製品不具合や製造装置の故障が発生するわけではありません。

そのような異常時のデータが入手できない状況では、正常時のデータと数式を基にした「数学的モデル」を用いて異常を予測することから始め、運用中に蓄積されていくデータを使用して追加で教師あり学習をさせていくことで精度向上を継続していくのが現実的でしょう。

予知保全システムへの費用対効果が判断できない

予知保全システムを導入するかどうかは、費用対効果が十分得られるかどうかで判断される場合があるでしょう。しかし、導入するシステムの費用は目的や状況によって異なり、さらに効果も独自の判断基準が必要です。

また、予知保全システムは事前の十分な性能予測が難しく、運用を始めた後に十分効果が得られるかどうかは、判断できません。結果として、事前に費用対効果を検証するのは困難です。

この課題は技術部だけで解決できるものではないため、他部署との調整が困難で大きな課題になってしまう可能性があります。

導入する予知保全システムの選定方法

予知保全システムと呼ばれるものには、さまざまな種類があります。その中で、自社の生産設備に合った予知保全システムはどのような観点で選べばいいかを解説します。以下の4点が重要なポイントです。

  • 類似の課題について解決実績があるか?
  • 自社の状況に合わせてカスタマイズ可能か?
  • 導入後のサポートがサービスに含まれているか?
  • 費用対効果がマッチするか?

類似の課題について解決実績があるか?

生産設備は用途によりさまざまな種類があり、予知保全を行うために必要なセンサ情報やノウハウなどは異なります。そのため、予知保全のサービスを提供している企業の中でも、得意とする領域が限定されている場合があります。

自社で解決したい課題と類似の設備、課題について解決実績があるかどうかは、予知保全システムの選定をする上で重要な要素です。類似の課題について解決実績があれば、比較的スムーズに解決できる可能性が高くなります。

自社の状況に合わせてカスタマイズ可能か?

予知保全システムのサービスは、フルオーダー、セミオーダー、パッケージに分類できます。セミオーダーやパッケージはフルオーダーに比べ安価ですが、自社の課題にマッチしなければ費用をかける意味がありません。

カスタマイズの可否も含め、自社の状況や課題に合わせた予知保全システムの構築ができるかどうかは、必ず確認すべき要素の一つです。

導入後のサポートがサービスに含まれているか?

予知保全システムは、導入した後の状況変化やシステム稼働後のデータ確認など、導入後にもサポートが必要となります。そこで、予知保全システムのサービスとして、導入時だけではなくその後のサポートがサービスに含まれるかどうかの確認も欠かせません。

導入後の運用期間にサポートをしてもらい改善することで、導入した予知保全システムの機能を最大限に活かし、効果を最大化できるようになるでしょう。

費用対効果がマッチするか?

予知保全システムの導入に限りませんが、導入による費用対効果がマッチするかどうかは、システムの選定をする際に重要なポイントです。

予知保全システムの導入費用は、カスタマイズの有無やシステムの構成要素次第で大きく変化します。また、導入後の効果も状況によって異なるため、具体的な評価指標を検討することも必要となります。

まとめ

予知保全システムの流れや導入時に想定される課題、またどのように選定すればいいかについて解説しました。予知保全システムは、適切なメンテナンス時期の予測、余剰となった保守部品コストの削減など大きな効果が見込めますが、各社の状況に応じたカスタマイズが必要です。

予知保全システムを導入する際に、どのような構成にすればいいかや導入にかかる費用に対して十分な効果が得られるかを自社単独で検討することは簡単ではありません。ASTINAが、予知保全システムの導入に関するご相談を承ります。ぜひお気軽にご相談ください。

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