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- DX推進/IoT開発事業
- AI/ROBOTICS開発事業
「PoCを始めたいけど、計画書の書き方が分からない」「すぐに使えるサンプルやテンプレートが欲しい」そんな声は少なくありません。
計画書なしでPoCを進めると、目的が曖昧になり、貴重な時間と予算を無駄にしてしまう可能性があります。
本記事では、すぐに使えるPoC計画書のサンプルを提示しながら、具体的な記入例と共に7つの必須項目を分かりやすく解説します。読み進めることで、再現性の高いPoC計画を設計でき、社内承認や予算獲得をスムーズに進めるための資料作りができます。
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PoC計画書のサンプルとテンプレート(Excel)
PoCとは「Proof of Concept」の略で、日本語では「概念実証」と呼ばれます。新しい技術やサービス、仕組みが本当に有効かどうかを、小規模に試して確認する取り組みです。
いきなり大規模な開発や導入をしてしまうと、コストやリスクが大きくなります。そのため、PoCでは「このアイデアは現場で使えるのか?」「期待した効果が出るのか?」を事前に確かめることが目的になります。
企業においてPoCは、新規事業やDXプロジェクトの初期段階でよく行われます。実証結果をもとに、次のステップである本格導入や事業化につなげる重要な役割を担っています。
PoCは新しいアイデアや技術を小規模に試すプロセスですが、計画なしで進めると目的があいまいになったり、関係者間で認識がずれたりして、成果を次のステップにつなげられないことがあります。
計画書を作ることで、目的や手順、役割を明確にし、PoCを確実に活かせる検証活動に変えることができます。以下になぜPoCに計画書が必要なのかを解説していきます。
PoCの最も重要なポイントは「何を確かめたいのか」をはっきりさせることです。計画書に目的とゴールを書いておけば、実証の評価基準が共有されます。
こうした具体的な基準があることで、PoCの「成功・失敗の判定」が可能になり、経営層にも成果を説明しやすくなります。
PoC計画書を作成する大きな目的のひとつは、検証内容を明確に整理し、誰が実施しても同じ結果を得られるようにすることです。
PoC計画書には、スコープ(対象範囲)や実施方法を明記します。これにより、検証が特定の人のやり方に依存せず、誰が行っても同じ手順で再現できるようになります。再現性があることで成果の信頼性が高まり、「この人だから成功した」という属人的な結果ではなく、客観的な根拠として本導入の判断材料になります。
また、検証内容が文章として整理されていれば、そのまま実運用にも活かしやすく、導入プロセスをスムーズに進めることができます。
PoCを進めるには、多くの場合、上層部の承認や予算の確保が必要です。計画書は「なぜこのPoCを行うのか」「投資に見合う成果が期待できるのか」を説明するための根拠となり、承認を得るための重要な材料になります。
また、計画書を作成して手順や目的を明確に示すことで、関係者全員の認識を揃えることができ、議論のすれ違いや誤解を防ぐ効果もあります。
PoCには現場担当者、開発チーム、外部ベンダー、経営層など、複数の関係者が関わります。計画書に「体制・役割」を明確に記載しておくことで、誰がリーダーで意思決定者は誰か、障害や問題が発生したときに誰が対応するのか、といった責任範囲を事前に整理できます。
これにより、トラブルや混乱が起きた場合でも、対応すべき人や手順が明確になっているためスムーズに問題解決が可能です。また、関係者全員が役割を共有することで、作業の重複や抜け漏れを防ぎ、PoCを効率的に進める土台を作ることができます。
PoCは期間やコストが限られていることが多いため、計画書でスケジュールや必要リソースを事前に明確にしておくことが重要です。これにより、進捗状況や予算消化の状況を客観的に把握でき、「予定より遅れている」「予算を超過している」といったリスクを早期に検知できます。
問題が見つかった場合でも、計画書を基に軌道修正の方針を立てやすく、リソースの再配分や作業優先度の調整をスムーズに行うことが可能です。
PoC計画書は、PoCを効率的に進め、成果を関係者に正しく伝えるための設計図です。ここでは、PoC計画書に欠かせない7つの項目を詳しく解説します。
PoCを実施する最初のステップは、目的とゴールを明確にすることです。
目的とは、なぜPoCを行うのかという理由や背景を示すもので、具体的な意図を含みます。
一方、ゴールはPoCの成果として何を達成したいのかを示すもので、具体的かつ測定可能な目標を設定します。
この項目を明確にすることで、PoCの全体像がチーム内で共有され、検証結果の評価基準もはっきりとします。
スコープは、PoCで検証する範囲や対象、逆に検証しない範囲を定める項目です。ここを明確にしておかないと、PoCの実施中に作業が膨大になり、時間やコストがかかりすぎるリスクがあります。
例えば、生産ラインの特定工程のみを対象にIoTセンサーの導入効果を検証する場合、その工程以外は対象外と明記します。また、ソフトウェア検証なら特定機能だけをテストする、といったように、PoCで扱う内容を絞ることで、限られた期間で成果を出しやすくなります。
検証内容は、PoCで具体的に何をテストし、どのように成果を確認するのかを定める項目です。単なる「試す」ではなく、明確な検証基準や手順を計画書に落とし込むことが重要です。
例えば、製造業の生産ラインに新しいIoTセンサーを導入する場合、どの設備でデータを取得し、どの指標で稼働率や故障予兆を評価するのかをあらかじめ決めます。こうして検証内容を具体化しておくことで、PoCの実施中に方向性がぶれることを防ぎ、成果を誰でも分かりやすく評価できるようになります。
実施環境は、PoCを円滑に進めるために必要なハードウェアやソフトウェア、ネットワーク、データなどの環境条件を整備する項目です。環境が整っていないと、PoCの開始が遅れたり、予期せぬトラブルが発生したりします。
例えば、検証用のサーバーやクラウド環境の設定、必要なデータの準備、アクセス権限の管理など、実施に必要な条件を事前に整理しておくことが必要です。
PoCの体制と役割では、関係者が誰で、どの責任を持つのかを事前に整理しておくことが重要です。プロジェクトオーナー、マネージャー、チームリーダー、開発担当者など、関わるメンバーとその責任範囲を計画書に明確に書き出しておくことで、作業の抜け漏れや判断の遅れを防ぐことができます。
特に製造業や物流、建設など複数部門が関わるPoCでは、役割が曖昧だとトラブルや混乱が起こりやすくなるため、計画書に明確に示すことが重要です。
スケジュールは、PoCの開始日から終了日までの全体の流れと、検証ステップごとの期限や重要な節目を明示する項目です。これにより、関係者全員が進行状況を把握でき、計画通りにPoCを進めることができます。
例えば、検証準備、テスト実施、結果確認、報告書作成といった工程を具体的に設定し、レビューのタイミングなどの節目も計画に含めておくことで、効率的に進行させることが可能です。
運営・管理方法では、PoC実施中の成果報告方法、リスク発生時の対応手順、データ管理ルールなどを明確にします。特に新規技術や外部環境を使用する場合は、誰がどの情報を管理し、どのタイミングで報告するのかを事前に決めておくことが重要です。この項目を整備することで、PoC中の混乱を最小限に抑え、計画通りに検証を進めることができます。
項目 | 内容 | 記入例・補足 |
---|---|---|
1. 目的・ゴール | PoCの目的や達成したい成果を記入 | 目的:新しい画像認識システムの導入による生産効率改善 ゴール:画像認識精度80%以上、作業時間短縮効果確認 |
2. スコープ | PoCで検証する範囲や対象、対象外を記入 | 対象:生産ラインA工程 対象外:B工程以降は検証しない |
3. 検証内容 | 具体的に検証する項目や手順を記入 | – 画像認識精度の測定 – 作業者による操作性評価 – 処理時間の計測 |
4. 実施環境 | PoCで使用するハード・ソフト・データ・ネットワークなど | サーバー:クラウドCPU4コア、メモリ16GB ソフト:画像認識システム 2025年10月時点最新版 データ:過去3か月分の生産ライン画像 ネットワーク:社内LAN、VPN接続 |
5. 体制・役割 | PoC関係者の役割や責任範囲を記入 | プロジェクトオーナー:田中太郎 マネージャー:佐藤花子 チームリーダー:宮井弘之 開発担当:3名 評価担当:2名 |
6. スケジュール | PoCの工程と期限、マイルストーンを記入 | – 事前準備:10/1~10/7 – システムセットアップ:10/8~10/10 – 検証実施:10/11~10/17 – 結果確認・レビュー:10/18~10/20 – 報告書作成:10/21 |
7. 運営・管理方法 | 進捗報告やリスク対応、データ管理方法を記入 | – 進捗報告:毎週金曜日会議 – リスク対応:問題発生時はマネージャーへ報告 – データ管理:PoC専用フォルダでアクセス制限 – 結果報告:定量データとレポート化 |
↓こちらから上記のサンプルをもとにした雛形(Excel)をダウンロードできます。
PoCを実施する際、計画書が不十分だと、せっかくの検証が成果につながらず「PoC死」と呼ばれる状態になってしまうことがあります。ここでは、PoC計画書でよくある失敗例と、それを防ぐための改善ポイントを具体的に解説します。
「システムを試す」だけで終わる。
計画書では、PoCの目的を単に「試す」ではなく、何を検証したいのか、どのような成果を目指すのかを具体化して記載します。具体的なゴールを設定することで、PoCの結果を評価しやすくなります。
例えば、「画像認識精度80%以上を目指す」「処理時間を従来比20%削減する」など、定量的な目標を入れると、チーム全員が同じ基準で検証結果を判断できます。
全工程や全機能を検証対象にする。
計画書では、PoCのスコープを明確に定め、どの工程や機能を対象にするか、何を対象外とするかを記載します。範囲を広げすぎると準備や実施に時間がかかり、予算も膨らむため、PoCの目的に沿った限定的な範囲で設定することが重要です。
例えば、生産ラインの一部工程のみを対象にする、特定の機能だけを検証するといった具体化により、迅速に結果を得られ、次の意思決定や本格導入への判断が容易になります。
誰が何を担当するか明確でない。
計画書では、プロジェクトメンバーそれぞれの役割と責任を具体的に記載します。誰が意思決定を行うのか、誰がデータを収集・評価するのか、誰が結果を報告するのかを明示することで、混乱や重複作業を防ぎ、問題発生時にも迅速に対応できます。
役割が明確になることで、関係者間の認識のずれも減り、PoC全体の信頼性が高まります。
工程間の余裕がなく、遅延が発生。
計画書では、各工程の所要時間やレビュータイミングを含め、現実的なスケジュールを記載します。準備、検証、レビュー、報告といった各ステップに十分な時間を確保することで、想定外の問題や遅延にも柔軟に対応できます。
途中で進捗を確認するチェックポイントを設定すると、計画通りに進んでいるかを確認しやすくなります。
PoC計画書は、導入する新技術やシステムの有効性を事前に検証する上で不可欠なツールです。目的やゴールを明確にし、検証内容やスコープ、体制・役割、スケジュールを整理することで、PoCの成功確率を高めることができます。
本記事では、PoC計画書に必要な7つの項目や作成のポイント、よくある失敗例と改善方法まで詳しく解説しました。PoC死やPoC検証については、関連記事もご覧ください。
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