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- AI/ROBOTICS開発事業

PoCのスケジュールがいつも遅れがちで、「思った通りに進まない…」と感じていませんか?
関係者が多く、タスクの依存関係も複雑なPoCでは、少しの遅延が全体の成果に影響します。現場ではその調整に振り回され、検証が不十分に終わってしまうことも。
しかし、事前に適切な期間設定とマイルストーンを設計すれば、PoCは驚くほどスムーズに進行します。
この記事では、PoCスケジュールの重要ポイントと効率的な共有方法を具体的に紹介します。

PoC(実証実験)とは、新しい技術やサービス、アイデアが実際に使えるかどうかを短期間で確認するためのプロジェクトです。PoCを行うことで、その技術やサービスが期待通りに動作するか、現場の業務に適応できるか、導入に伴うリスクがないかといったことを事前に把握できます。


PoCは、限られた期間内に成果を出すことが求められるため、スケジュール管理が適切に行われていないと、検証が途中で止まったり、必要なデータや評価が揃わず、正確な判断ができないリスクがあります。
PoCには複数の部署やメンバーが関わることが多く、作業の順序や依存関係が複雑になる場合もあります。例えば、データ準備やモデル作成、検証の順序が不明確だと作業が滞り、途中で検証が止まることがあります。また、ある作業が前の作業に依存している場合、順序が崩れると必要な評価データが揃わず、正確な結果を得られなくなることもあります。
このように、スケジュール管理を行うことで、誰がどの作業を担当し、どのタイミングで成果を確認するかが明確になり、作業の抜け漏れや遅延を防ぐことができます。


PoCの期間は、業界やプロジェクトの内容によって大きく異なります。それぞれの特徴を理解して、適切な期間を設定することが重要です。
4〜8週間
ITやソフトウェア開発のPoCでは、システムやアプリケーションの基本的な動作確認や機能検証が中心となります。比較的短期間で結果を確認できることが多く、4週間から8週間程度が一般的です。
この期間内で、実際に動作するプロトタイプを作成し、ユーザーや関係者にテストしてもらうことが目標になります。週単位でタスクを分けて進捗を管理すると、効率よく検証を進められます。
6〜12週間
AIや機械学習を使ったPoCでは、データの収集や前処理、モデルの構築と評価など、多くのステップを踏む必要があります。そのため、6週間から12週間程度の期間を目安に計画されることが多いです。
期間中はデータの品質や量の確認、アルゴリズムの選定、性能評価などを繰り返し行い、結果をもとに改善を重ねます。特にAIの場合は、初期のモデルで期待通りの精度が出るかを確認することが重要です。
2〜3か月
製造業や現場導入型のPoCでは、実際の生産ラインや作業環境での検証が必要です。例えば、製造工程に新しい設備やIoTセンサーを導入して効率化を検証する場合、設備の設置、動作確認、作業員による操作テストなど、現場の調整も含めて2か月から3か月程度が一般的です。
期間内に現場で起こり得る課題を洗い出し、改善策を試すことが目的となるため、計画には余裕を持たせることが大切です。
3〜6か月
製薬業界や品質保証に関わるPoCでは、安全性や精度の確認が非常に重要です。そのため、検証プロセス自体に時間がかかることが多く、3か月から6か月程度を目安に計画されます。
例えば、新しい分析機器やAIを用いた品質チェックのPoCでは、サンプルの準備、測定、結果の分析を複数回繰り返す必要があります。また、法規制や承認プロセスを考慮する場合もあり、スケジュールには余裕を持たせることが成功のポイントです。

| ステップ | 割合 | コメント |
| 目的・スコープ・KPIの明確化 | 10〜15% | 適切。PoCの方向性を決める重要ステップで、長くても15%程度が目安。 |
| データ準備・アセスメント | 20〜30% | データ量や前処理の必要性によっては30%以上になることもある。製造業や物流ではセンサー・履歴データの整備に時間がかかる場合あり。 |
| プロトタイプ作成・モデル選定 | 25〜30% | 標準的。技術検証の中心部分なので割合が大きくなるのは自然。 |
| 検証・評価 | 20〜25% | 妥当。結果の精度検証やチューニングに時間を確保する必要あり。 |
| 本開発への移行判断 | 5〜10% | 適切。意思決定に必要な時間を確保する程度で十分。 |

PoCの期間目安とステップ構成をイメージしやすくするために、「IT・AI系(8〜12週間)」と「製造業・現場導入型(4~6か月)」のスケジュール例を紹介します。
実務では「データ準備」「設備調達」「社内承認」に時間がかかることが多く、結果として2〜3か月(製造業では4〜6か月)程度の枠をとる企業も少なくありません。
自社の状況に合わせて週数やタスクを増減してください。
IT・AI系の一般的なPoCを想定した、6〜8週間のスケジュール例です。
■ 1〜2週目:目的・スコープ・体制の整理
・PoCの目的・対象業務・検証範囲(スコープ)の明確化
・KPI・評価指標のたたき台作成
・担当者・決裁者・現場メンバーなどの体制確認
・既存システム・データの所在、制約条件(予算・期間・ルール)の確認
■ 3〜4週目:データ準備・環境構築
・必要データの抽出方法や権限申請の調整
・実際のデータサンプルの取得、データ品質の確認
・クラウド/オンプレ環境の準備、アカウント発行
・分析ツール・ライブラリのセットアップ
■ 5〜7週目:前処理・プロトタイプ構築
・欠損・異常値対応などの前処理
・簡易分析で傾向を把握し、モデルやルールの方針を決定
・ベースラインモデルの作成、精度・再現率・処理時間の評価
・簡単なデモ画面・レポートの作成
■ 8〜9週目:改善・ステークホルダーレビュー
・パラメータ調整やアルゴリズム変更によるモデル改善
・良い例/悪い例の確認と、現場担当者とのレビュー
・業務フローとのフィット感、運用イメージのすり合わせ
■ 10〜12週目:結果整理・本開発への移行判断
・KPIに基づく最終評価と、PoC結果のレポート化
・本番導入した場合の効果・コスト・リスクの整理
・本番化または追加PoCに進むかの判断、概算スケジュール・費用感の整理
製造業や現場導入型のPoCを想定した、4〜6か月のスケジュール例です。
■ 1〜4週目:現場ヒアリング・目的整理・影響範囲の確認
・現場責任者・作業者へのヒアリング、課題の洗い出し
・対象ライン・工程の選定、安全・品質保証上の制約確認
・PoCの目的・スコープ・KPIの整理
・生産計画を踏まえた「止められる時間帯」「止められない期間」の確認
■ 2〜3か月目:データ取得設計・調達・設備準備
・必要なデータ項目の整理(センサー、画像、履歴など)
・既存設備で取れるデータと、新規設置が必要なデータの切り分け
・センサー・カメラ・ゲートウェイなどの調達、納期確認
・工務・保全・安全衛生との調整、工事日程・ライン停止時間の確保
■ 3〜4か月目:設備設置・試運転・データ収集
・設備設置工事と動作確認(安全確認を含む)
・試運転でデータ取得テスト、ノイズや欠損の確認
・通常稼働中のラインから一定期間データ収集
・データ品質に応じたセンサー位置や設定の微調整
■ 4〜5か月目:分析・試験運用(限定条件)
・収集データの分析、不良・異常パターンの可視化
・ルールベース/AIなどのアルゴリズム検討・検証
・特定ライン・時間帯など条件を絞った試験運用
・作業者の使い勝手、安全面の確認、運用上の課題整理
■ 5〜6か月目:効果検証・本格導入可否の判断
・PoC期間中の実績データをもとに効果を評価(不良率・停止時間・工数などの変化)
・安全・品質保証部門による評価、リスク確認
・本格導入に必要な設備投資・人員教育・ルール整備の整理
・経営層・工場長への報告と、本格導入/追加検証の判断

PoCは、限られた期間で新しい技術やプロセスの有効性を検証するためのプロジェクトです。そのため、スケジュールを組む際には以下の点に注意することが重要です。
PoCは限られた期間で成果を出す必要があります。理想だけで期間を決めると、検証が不十分になったりコストやリソースの無駄が増えたりする原因になります。そのため、各ステップに必要な時間を現場の作業負荷や設備準備状況、データ整備状況を考慮して見積もることが重要です。
さらに、設備トラブルやデータ不足、メンバーのスケジュール調整など、予期せぬ事態に備えてバッファ期間や調整可能な余地をスケジュールに組み込むことで、柔軟に対応でき、PoCの目的を達成しやすくなります。
PoCの各ステップで「何をいつまでに達成するか」を明確にしておくことで、進捗の把握や成果の評価がスムーズになります。KPIや評価指標をこれらの区切りポイントに結びつけておくと、PoC終了時に導入判断や改善判断が正確に行えます。また、こうした区切りの目標はチーム全員で共有し、認識を揃えておくことが大切です。
PoCは複数の部署や現場スタッフが関わることが多いため、スケジュールを作成した段階で関係者全員に共有し、合意を得ることが不可欠です。ガントチャートやスプレッドシートなどのツールを活用すると便利です。共有することで認識のズレや作業の抜け漏れを防ぎ、スムーズな進行を実現できます。

PoCを確実に進めるためには、スケジュールを「作るだけ」でなく、関係者全員が同じ情報を共有し、常に最新の状態を把握できることが欠かせません。共有の方法が適切でないと、作業の抜け漏れや認識のズレが発生し、PoCの成果にも影響します。ここでは、PoCスケジュールを効率的に共有するための具体的な方法を紹介します。
ガントチャートは、タスクの開始日・終了日や進捗状況を視覚的に示すツールです。ExcelやGoogleスプレッドシートでも簡単に作成でき、専門ツール(Trello、Asana、Jiraなど)を使えば、自動でガントチャートが更新され、進捗状況も一目で把握できます。
ガントチャートを共有することで、どの作業が遅れているか、どこにリソースを集中するべきかが分かりやすくなります。
PoCは短期間で進めるため、スケジュール情報は常に最新の状態に保つことが重要です。Googleスプレッドシートやクラウド型のタスク管理ツールを使えば、担当者が更新した内容が全員に即座に反映されます。遅延やトラブルが発生した場合も、リアルタイムで情報を共有できるため、素早く対応できます。
スケジュールを共有するだけでなく、更新・報告のルールも決めておくとさらに効果的です。例えば、各タスクの完了時に担当者がガントチャートを更新する、週1回の定例ミーティングで進捗を確認する、遅延が発生した場合は24時間以内に報告するといったルールです。
ルールを明確にしておくことで、チーム全員が同じ状況を把握し、効率的にPoCを進めることができます。
PoCのスケジュール設計は、PoC成功率を大きく左右する重要な要素です。 業界ごとに異なるPoC期間を理解し、目的に合わせた現実的なスケジュールとマイルストーンを設定することが欠かせません。
ガントチャートによるPoC進捗管理やリアルタイム共有の体制が整うことで、遅延リスクを大幅に抑え、短期間でも成果を最大化できます。 「成果につながるPoCを効率良く進めたい」という企業ほど、計画段階の最適化が重要になります。
ASTINAは、AI・IoT・ロボティクスを活用したPoCの企画からスケジュール設計、開発、導入支援まで一貫してサポートしています。現場に即した実装力でPoCを成功へ導きますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。