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YOLOによる物体検出とは?仕組み・種類・応用事例を徹底解説

AI認識イメージ
の記事はこんな人におすすめ
  • 物体検出における、YOLOがどんな仕組みなのか知りたい
  • 自動検出を始めたいが、どのモデルを選べばいいか迷っている
  • YOLOの活用イメージをつかみたい

物体検出の導入を検討していても、「技術が難しそう」「どの手法が正解なのか判断できない」と悩んでいませんか?

物体検出におけるYOLOは、画像全体を一度に解析するという独自の仕組みにより、これらの課題を解消する代表的な技術です。高速処理と高精度を両立し、製造ラインや監視、医療診断などで広く活用されています。

この記事では、YOLOの強み、各モデルの特徴、導入シーン別の選び方まで詳しく解説します。

目次

物体検出とは?

物体検出とは、画像や動画の中に「何が映っているのか」「どこにあるのか」を自動で特定する技術のことです。例えば、写真の中で人や車、犬や猫などの対象物を認識し、それぞれの位置を四角い枠(バウンディングボックス)で囲むことができます。

近年では、AIや機械学習、特にディープラーニング技術の進化により、従来よりもはるかに精度の高い検出が可能になり、リアルタイムでの解析も実現しています。

物体検出は画像解析の基礎技術として確立し、AIを活用した自動監視や製造ラインでの異常検知、無人運転、セキュリティシステムなど、さまざまな分野で幅広く活用されています。

YOLOとは?

YOLO(You Only Look Once)は、物体検出のために開発されたAIモデルの一つで、画像や動画に映る物体を高速かつ効率的に検出することを目的としています。

従来の物体検出手法では、画像を小さな領域に分割して順番に解析したり、候補領域を生成して1つずつ分類する方法が主流でした。この方法は正確ではあるものの、処理に時間がかかり、リアルタイム解析には不向きという課題がありました。

YOLOはこの課題を解決するため、画像全体を一度に解析し、各領域に物体があるかどうかとその種類を同時に予測する「一発検出(one-stage)」の方式を採用しています。その結果、処理速度が速く、複数の物体が写っている場合でも効率的に検出可能です。また、比較的シンプルな構造のため、既存のAIフレームワークで容易に導入でき、幅広い用途に対応できます。

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YOLOが従来手法より優れている点

従来の物体検出手法には、HOG(Histogram of Oriented Gradients)やR-CNN(Region Based Convolutional Neural Networks、Fast R-CNN、Faster R-CNN)などがあります。

これらの手法は正確に物体を検出できますが、画像を順番に解析する方式のため処理速度が遅く、大量の画像や動画をリアルタイムで解析するには不向きという課題がありました。

YOLOは、こうした課題を解決した物体検出モデルです。YOLOの主な特徴は以下の通りです。

YOLOの主な特徴
  • 高速な処理
    画像全体を一度に解析する「一発検出(one-stage)」の方式を採用しているため、従来手法よりも圧倒的に高速で物体を検出できます。
  • 全体を見た包括的な解析
    複数の物体が写っていても、画像全体の情報を同時に参照して効率よく検出できます。
  • 導入のしやすさと汎用性
    比較的シンプルな構造で、既存のAIフレームワークにも容易に実装可能。物体の種類や画像サイズを問わず幅広い分野で利用できます。

YOLOによる物体検出の仕組み

YOLOは、1回の処理で画像全体を見て物体を見つける方法です。例えば、1枚の写真に人や犬、車が写っている場合、YOLOはそれぞれがどこにいるかを瞬時に判断できます。従来の方法よりも格段に速く、複数の物体が写っている場合でも効率よく検出できます。

YOLOの仕組みは次のような流れです。

STEP
画像を小さなマスに分ける

入力する画像を均等に小さな正方形(グリッド)に分割します。各マスは「この中に物体があるか」を判断します。

STEP
物体の位置と種類を予測する

各マスで、物体があるかどうかを判断し、あれば四角い枠(バウンディングボックス)で囲みます。また、「人か犬か車か」など、物体の種類も同時に予測します。

STEP
余分な枠を整理する

同じ物体が複数の枠で検出されることがあります。その場合、信頼度の高い枠だけを残し、重なった余分な枠は削除します。この処理を NMS(Non-Maximum Suppression) と呼びます。

YOLO物体検出モデルの種類と選び方

YOLOには、登場以降いくつかのバージョンや派生モデルが存在し、それぞれ特徴や用途が少しずつ異なります。用途や環境に応じて最適なモデルを選ぶことが重要です。

YOLOの種類特徴適した用途
YOLOv3小さな物体の検出性能向上中規模のリアルタイム物体検出
YOLOv4精度と速度のバランス改善、複雑な画像でも安定精度重視かつ安定した解析
YOLOv5PyTorchベース、モデルサイズ調整可能リアルタイム性と精度の両立、カスタム学習も容易
YOLOv8YOLOv5より精度・速度ともに向上高精度解析、産業用途や研究向け
YOLOv9高速化設計と効率的推論を重視大規模データ、高速推論
YOLOv10NMS不要設計、新しい畳み込み構造を採用超高速推論、エッジ・リアルタイム重視
YOLOv11小物体検出性能を強化、空間注意モジュールを導入リアルタイム + 小物体検出
YOLOv12Attention‑Centric アーキテクチャ、高速と高精度を両立先端アプリ・高精度・リアルタイム・研究用途
軽量モデル(Tiny, Nano)モデル構造を小さくし計算量を削減、非常に高速でリアルタイム解析可能。ただし精度はやや低めCPUやエッジデバイスでのリアルタイム物体検出、軽量解析

適用シーン別の選び方

用途や運用環境に応じて、適切なYOLOモデルを選ぶことが重要です。

  • 製造ラインでの異常検知
    高精度モデル(YOLOv8~YOLOv12、標準版YOLOv5)を使用することで、小さな部品や欠陥も見逃さず検出可能です。精度を重視する現場では、最新バージョンのYOLOを選ぶとより安定した検出性能が期待できます。
  • 物流倉庫での物体追跡や在庫管理
    軽量モデル(TinyやNano)を使用することで、複数のカメラ映像をリアルタイムで解析できます。リアルタイム性が重要な場面やリソース制約のある環境では、軽量モデルが適しています。
  • 防犯カメラや監視用途
    軽量モデルでも十分対応可能です。CPUでも動作するため、導入コストを抑えつつ、複数拠点での監視システムを構築できます。必要に応じて、高精度モデルを選ぶことで小さな動体や遠距離の物体検出にも対応可能です。

YOLOで検出できるもの

YOLOは、画像や動画から多様な物体を瞬時に認識し、その位置を特定できる物体検出アルゴリズムです。特徴として、人間の目のように「全体を一度に捉える」処理が可能で、リアルタイム性と高精度を両立しています。検出可能な対象は多岐にわたり、以下のようなカテゴリーに分類されます。

人や動物

検出対象例

人間、犬、猫、鳥、牛など

YOLOは人や動物など、形や姿勢の変化が大きい対象にも高い認識精度を発揮します。監視映像や映像解析、行動データの取得などに適しており、群衆解析や動物行動研究などの分野で広く利用されています。

乗り物・交通関連

検出対象例

自動車、バス、トラック、バイク、自転車、信号、標識など

車両や交通インフラなどの識別にも優れ、移動体の認識・追跡に活用されています。交通監視カメラやドライブレコーダー映像の分析など、リアルタイムな道路状況把握に応用されています。

日用品や家具・機器類

検出対象例

椅子、テーブル、ボトル、箱、スマートフォン、PC、機械部品など

一般的な日用品から工業製品まで幅広く認識可能です。製造・物流・小売といった分野で、部品検査や在庫管理、自動仕分けなどの自動化に貢献します。特に、複数の物体が混在する環境でも高精度に検出できる点が強みです。

自然物・環境要素

検出対象例

樹木、岩、海面、雲、建物など

産業ドローンや環境モニタリングにおいて、地形・構造物・自然物の検出にも応用されています。農業や建設、災害対策など、屋外環境下での物体識別にも対応します。

特殊・応用分野の対象

検出対象例

臓器、腫瘍、欠陥箇所、動作中の人の姿勢など

学習データをカスタマイズすることで、医療や製造など専門領域向けの物体も検出可能です。医用画像における病変の特定や、製造ラインでの不良品・異常品の検知など、特定分野に最適化された検出モデルとして応用が進んでいます。

YOLOの活用事例

YOLOは、高速かつ高精度な物体検出が可能なモデルであるため、さまざまな分野で幅広く活用されています。以下では、代表的な活用シーンを紹介します。

自動運転技術

自動運転システムでは、車載カメラの映像をもとに歩行者・車両・信号・標識などをリアルタイムに検出するためにYOLOが利用されています。高速な推論性能により、走行中の状況変化に即応した制御が可能になります。これにより、事故防止や運転支援機能の高度化に大きく役立っています。

セキュリティ・監視システム

監視カメラ映像をYOLOで解析することで、不審者の侵入検知や危険行動の自動識別を実現できます。人による常時監視を補完し、異常が発生した際には即時に警告を出す仕組みが構築可能です。特に工場や物流倉庫、商業施設などでの安全管理・防犯強化に活用が広がっています。

製造業での異常検知

製造現場では、製品や部品の欠陥、組立ミスをYOLOで検出し、品質検査を自動化する取り組みが進んでいます。従来の目視検査よりも短時間で安定した検出精度が得られるため、人手不足対策や生産ラインの効率化に効果を発揮します。また、異常検出データを分析することで、予防保全にもつなげられます。

医療画像診断

医療分野では、YOLOを応用してX線画像やCT画像から腫瘍や骨折部位を自動で検出する研究・実用化が進んでいます。医師の診断を支援し、見落としリスクを低減することで、診断精度の向上や診断時間の短縮に役立っています。特にディープラーニングによる学習精度の高さが注目されています。

小売業の顧客行動解析

小売店舗では、監視カメラ映像をYOLOで解析し、来店客の人数や動線、滞在時間を把握するシステムが導入されています。顧客行動の可視化により、店舗レイアウトの最適化や販促施策の改善に活かすことができます。また、レジ待ち行列の検知や不審行動の発見にも応用されています。

YOLOの実装と導入のポイント

YOLOを実際に使うには、学習・推論・現場運用の3つのステップで押さえるべきポイントがあります。ここでは、導入時に注意したいポイントをわかりやすく解説します。

学習データの準備とラベル付け

YOLOはAIモデルなので、まずは学習用の画像と正しいラベル(対象物の種類と位置)を用意する必要があります。正しいデータが揃わないと、いくらモデルを改良しても精度が上がらないため、データの質はとても重要です。

  • 画像は対象物がはっきり見えるものを選ぶ
  • 対象物ごとに四角い枠(バウンディングボックス)を付けてラベル付け
  • ラベル付けツール例:LabelImg、Roboflowなど

YOLOを動かすための機器の選択

YOLOで物体検出を行う際には、どの機器で処理を実行するかによって速度や精度が変わります。画像や動画を解析する処理は計算量が多いため、十分な性能を持つ機器を選ぶことが重要です。

  • GPU(グラフィックボード)
    高速な並列処理が可能で、特に大きなモデルや高精度な解析を行う場合に向いています。
  • CPU(パソコンの中央処理装置)
    導入は簡単ですが、大規模データや高精度モデルでは処理速度が遅くなることがあります。
  • エッジデバイス(Jetson、Raspberry Piなど)
    小型で現場に設置しやすく、軽量モデルを用いればリアルタイム解析も可能です。電力や設置スペースが限られた環境に適しています。

精度向上のためのハイパーパラメータ調整

YOLOは、学習時にハイパーパラメータと呼ばれる設定を調整できます。適切に設定することで、精度の高い検出モデルを作ることができます。小さすぎると学習が進まず、大きすぎると学習が不安定になるので、最適値を見つけることが大切です。

  • 学習率(Learning Rate)
  • バッチサイズ(1回の学習で使う画像の枚数)
  • 入力画像サイズ

現場での設置・撮影条件の調整

YOLOは学習データに近い環境での検出が得意です。現場で使う際は以下の点に注意します。

  • ライティング:明るさや影の影響で検出精度が変わる
  • カメラ角度:学習時の角度と現場の撮影角度が大きく違うと誤検出しやすい
  • 背景や対象物の密集度:対象物が重なっていると誤検出が起こりやすい

まとめ

YOLO物体検出は、画像や映像から人や物、機器まで多様な対象をリアルタイムで高精度に認識できるAI技術です。

従来の手法より高速かつ効率的で、製造業の品質検査や自動運転、医療画像診断、物流現場の異常検知など幅広い分野で導入が進んでいます。モデルの種類や学習データ、現場環境に応じた最適化を行うことで、システムの精度や安定性をさらに高めることが可能です。

ASTINAでは、現場課題に合わせた物体検出システムの企画・開発・導入支援を行っています。導入のご相談や詳細については、お気軽にお問い合わせください。

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