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食品工場における異物混入対策|原因・事例・最新技術まで総まとめ

この記事はこんな人におすすめ
  • 食品工場の異物混入対策を基礎から知りたい
  • 異物混入の原因と対策を整理して理解したい
  • IoTやAIを活用した最新の防止策に興味がある

食品工場における異物混入対策は、安全性と品質を守るうえで欠かせない重要課題です。しかし、異物の種類や発生原因は多岐にわたり、対策も一つではありません。

本記事では、異物混入とは何かという基本から、食品工場で多い異物の種類、原因別の対応策、さらにIoT・AIを活用した最新の異物混入対策までを総まとめで解説しています。

目次

異物混入とは?

異物混入とは、本来食品に含まれてはいけない金属・樹脂・ガラス・毛髪・昆虫などの異物が、製造工程や流通過程で食品に入り込んでしまうことを指します。異物の大きさや量にかかわらず、消費者の安全や安心を脅かす要因となるため、食品工場においては最も重視すべき品質リスクの一つです。

特に食品製造の現場では、原材料・設備・作業者・環境など、複数の要因が重なって異物混入が発生します。そのため、単なる作業ミスとして捉えるのではなく、工場全体の管理体制や仕組みの問題として向き合うことが求められます。

食品工場・食品製造における異物混入対策の重要性

食品工場では、異物混入は企業の信頼を大きく揺るがす最も重大な品質トラブルの一つです。わずか数ミリの異物でも、消費者クレームや自主回収、ブランド毀損、取引停止といった大きな損失につながる可能性があります。

特に食品は人の体に直接入る製品であるため、安全性への要求レベルは他業界と比べても格段に高く、異物混入の発生は企業に深刻な影響を及ぼします。

食品工場で起こりやすい主な異物の種類

食品工場では、製造工程の特性や設備の構造、人の動きなどが複雑に絡み合うため、多様な異物が混入する可能性があります。特に以下の異物は発生頻度が高く、各工場で重点的に対策が求められます。

  • 金属片
    機械設備の摩耗、破損、ネジやワッシャーの脱落などから発生します。人体への危険性が高いため、食品工場では金属検出機やX線検査機を用いて最も厳重に管理される異物です。
  • 樹脂片(プラスチック片)
    コンベアや治具、包装資材の欠け・削れなどから混入します。目視で見つけにくく、比重も軽いためライン上で流れやすいのが特徴です。
  • ガラス片
    照明カバーや容器の破損などが主な原因です。極めて危険度が高く、ガラス使用の削減や破損時の徹底的なライン停止・清掃が必須となります。
  • 毛髪・繊維
    従業員由来のもっとも一般的な異物です。帽子・ユニフォームの着用ルール徹底、粘着ローラー、エアシャワーなどで対策を行います。

  • 工場の立地や季節性に大きく依存します。特に飛翔昆虫は混入リスクが高く、エアカーテン・防虫灯・ゾーニングが有効です。食品工場では最も避けたい異物の一つです。
  • 木片
    パレット、木製治具、梱包材などから発生します。小さく破片化しやすいため、近年はプラスチックパレットへの置き換えが進んでいます。
  • フィルム片(包装材片)
    包装機のシール不良やフィルム切れ、ロール端部の破れなどにより混入します。色彩選別機やX線検査で検知できない場合が多く、工程管理が重要です。

食品工場で異物混入が発生する主な原因とその対応策

食品工場では、原材料・設備・環境・人など多くの要素が関わるため、異物混入のリスクは常に存在します。以下では、発生しやすい主な原因を5つに分類し、それぞれの効果的な対応策をまとめます。

従業員による異物混入

原因例:毛髪、繊維、アクセサリー、私物、爪、汗、手袋破れ など

従業員由来の異物は全異物混入の中でも最も頻度が高く、日常のちょっとした油断で発生しやすいのが特徴です。毛髪は長さが数センチ単位でも異物としてクレームになり、ユニフォームの繊維や糸くず、マスクのゴム片、軍手のほつれなども混入しやすい代表例です。

さらに、作業者の動作が多いラインほど落下リスクも高まり、汗や皮膚片など、無意識に発生する異物も見逃せません。特に新人作業者や繁忙期はルール遵守の揺らぎが起こりやすく、属人化した現場ではミスが繰り返される傾向があります。

主な対応策

身だしなみルールの徹底(帽子・インナーキャップ・ヘアネットの多重化)
粘着ローラーによる入場前チェック
ユニフォームの定期交換と破損確認
手袋の破れ・ほつれチェック、作業内容に応じた素材選択
アクセサリー・私物の完全排除
教育(動画・実演)による反復指導と理解度確認

害虫・害獣による異物混入

原因例:虫(コバエ・蛾・甲虫など)、ネズミの糞・毛、侵入痕、巣の材料 など

害虫・害獣は、一度工場に侵入すると短期間で繁殖し、重大な異物混入事故につながります。食品工場は「温度・水分・原料」という生物が好む環境が揃っているため、外部からの侵入リスクは常に存在します。

飛翔昆虫は夏場に増加し、夜間の工場照明に誘引されやすい一方、歩行昆虫やネズミは段ボールや原材料置き場から侵入するケースが多く見られます。害虫は死骸・脚・羽片なども異物になり、食品への不衛生イメージから企業ブランドに大きなダメージを与えます。

主な対応策

建物の隙間塞ぎ(ドア下のブラシ・パッキン補修)
エアカーテン・自動ドアで開口部からの侵入対策
防虫灯・粘着トラップによる捕獲と定期交換
原材料や段ボールの導線管理、搬入口の清潔化
ネズミ対策(捕獲器、毒餌ステーションの設置と記録)
外部専門業者によるペストコントロール(PMP)

施設・設備による異物混入

原因例:金属摩耗粉、機械の破損片、ネジの脱落、樹脂パーツの欠け、照明カバーの破損 など

設備由来の異物は、混入した際の危害レベルが非常に高く、企業にとって重大事故につながる要注意領域です。

例えば、ベルトコンベアの樹脂片の剥がれ、ミキサーの摩耗による金属粉、ガイドローラーの欠け、ネジ落下などは、毎日の稼働で少しずつ劣化が進むため気づきにくい問題です。また、老朽化設備の使用、臨時修理による固定の甘さ、清掃時の強い衝撃による部品破損など、現場の運用次第でリスクが高まります。

特にガラス製品(照明・温度計)は割れた際の影響範囲が大きく、発見が難しい場合があります。

主な対応策

設備の日常点検・定期メンテナンス(点検記録の運用)
緩み防止マーキング(ネジに色付けして変位を可視化)
老朽化した部品の計画交換と予備品管理
ガラス製品の不使用、または破損防止カバーの使用
破損発生時はライン停止 → 全清掃 → 破片の再確認
金属検出機・X線検査機による最終工程の強化
異音・振動の早期発見に向けたIoTセンサー導入

清掃用具・原材料などに由来する異物

原因例:モップ繊維、ブラシ毛、ウエスの糸、段ボール屑、木片、原材料由来の異物 など

清掃用具や原材料由来の異物は、現場で“見逃されがちな領域”で、実は混入件数としては多いカテゴリーです。

モップやブラシは経年劣化によって毛抜けが発生し、乾燥したウエスは繊維が飛散しやすくなります。また、段ボール屑や木製パレットの破片などは、荷受けや搬送工程で混入しやすい典型例です。

さらに食品原料そのものにも、農産物なら小石・土・枝片、畜肉なら骨片、海産物なら貝殻片が混入している場合があり、“受入時のチェック不足”が大きなリスクになります。

主な対応策

清掃用具のゾーニング(ライン用・床用・排水溝用を色で分類)
モップ・ブラシの交換基準の設定と定期交換
ウエスの使い捨て化、または異物が出にくい素材への移行
段ボールの持ち込みルール(製造エリアに段ボール禁止など)
木製パレットから樹脂パレットへの切り替え
原材料の受入検査強化(ふるい・洗浄・目視チェック)
包装材の破損防止と管理者の工程監視

不十分な衛生管理・SOP(標準作業手順書)未整備

原因例:ルールの曖昧さ、作業手順の属人化、記録・点検不足、教育不足 など

衛生管理のレベルが低い工場では、異物混入は“偶然ではなく必然”として発生します。手順が文書化されていない、あるいは文書はあっても現場で守られていない状態では、作業者ごとに判断基準が異なり、結果として管理が崩れていきます。

教育が不足している現場では「なぜこのルールが必要なのか」が理解されておらず、形だけの作業になりがちです。また、点検や清掃記録が形骸化すると、異常の見落としや不適切な運用が放置され、異物混入リスクが指数的に上昇します。

主な対応策

HACCPに基づいた危害分析と工程管理
SOP(標準作業手順書)の整備・更新、現場への浸透
教育の定期化(テスト・動画・OJTの組み合わせ)
点検・清掃記録の見直し、リアルタイム運用
管理者によるGMPパトロールの実施
トラブル発生時の再発防止手順(原因分析→対策→検証)

異物混入を防ぐための組織的な取り組み

異物混入対策は、個々の作業者の注意だけでは限界があります。工場全体として「再現性のある仕組み」を構築し、誰が担当しても同じレベルで異物混入リスクを抑えられる状態を作ることが重要です。ここでは、食品工場で広く実施されている代表的な組織的取り組みを紹介します。

HACCPに沿った衛生管理

HACCPは、「どこで異物混入のリスクが発生しうるか」を体系的に洗い出し、重点管理点(CCP)を設定して管理する仕組みです。

作業者の感覚や経験に頼らず、工程全体を科学的に分析して管理するため、抜け漏れが発生しにくく、異物混入防止の土台となります。特に、金属検出機やX線検査機などをCCPに設定することで、異物検査の精度と管理レベルを継続的に維持することが可能です。

日本では、2021年6月1日から原則すべての食品等事業者に対し、HACCPに沿った衛生管理の実施が義務化されており、事業者として対応すべき基本要件となっています。

参考:HACCP(ハサップ)

ゾーニング(エリア区分)

異物混入を防ぐ上で、工場内の「どこまでが清潔区域か」「どこからが汚染リスクが高い区域か」を明確に分ける仕組みです。“エリア間の移動による汚染” を根本から抑えます。

  • 毛髪や外気の塵の持ち込み
  • 虫の侵入
  • 原料由来異物の拡散

ゾーニングは「作業動線」「物の流れ」「空気の流れ」を一貫してコントロールすることで、現場依存にならない異物対策を実現します。

SOP(作業手順書)の整備

異物混入対策は、正しい方法で清掃し、正しい方法で作業し、正しい方法で点検することで成立します。

SOPを整備することで、以下のメリットがあります。

  • 作業者による判断のブレが減る
  • 新人教育が容易になる
  • 作業内容の「標準化」により、異常が発見しやすくなる

個人の経験ではなく “決められた手順の遵守” によって品質を維持できる点が、原因別の対応策との明確な差分です。

記録とチェック体制の多層化

異物混入対策を確実に機能させるためには、複数の視点で確認する仕組みが不可欠です。

  • 作業者自身のチェック
  • 班長・上長のダブルチェック
  • 品質管理部門による定期監査

また、記録を残すことで、 「どの工程で問題が起きたのか」「どのタイミングから混入リスクが高まったのか」 といった再発防止の分析が容易になります。

教育・安全文化の定着

従業員による異物混入を防ぐには、基本教育と日常的な安全意識の定着が欠かせません。食品工場では、髪の毛・私物・作業ミスなどのリスクが多いため、入社時だけでなく 定期的な衛生教育 を行い、手洗い・身だしなみ・私物管理などの基本動作を徹底します。

また、実際の異物混入事例を共有することで、「なぜ守る必要があるのか」を現場が理解しやすくなります。さらに 相互チェック・声かけ・5S活動 (整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を取り入れることで、現場全体でルールを守る文化が定着し、ヒューマンエラーの防止につながります。

最新技術を活用した異物混入対策

食品工場では、従来の目視確認や作業者の注意だけでは異物混入を防ぎきれないケースが増えています。近年は、異物検査装置の高度化に加え、IoTやAIを活用した予防型の異物混入対策が注目されています。

これらの最新技術を活用することで、検出精度の向上だけでなく、設備異常や異物混入リスクを早期に把握することが可能になります。以下では、異物検査装置の最新動向と、IoT・AIによる異物混入の予防技術について解説します。

異物検査装置の最新動向

異物混入対策において、検査装置の選定は品質保証の要となります。近年は検出精度の向上や自動化技術の発展により、従来よりも小さな異物や複雑な混入にも対応できるようになってきました。食品工場で利用される代表的な3種類について解説します。

  • 金属検出機
    金属検出機は、金属異物の検出に特化した食品工場の基本的な異物検査装置です。近年は微細な金属異物でも検知できる高感度化が進んでおり、製品特性(水分・塩分)や包装条件の影響を抑えた安定した検知性能を備えた機種も増えています。
  • X線検査機
    X線検査機は、金属だけでなく、ガラス片・石・骨・一定の密度を持つ硬質樹脂など、幅広い異物を検出できる装置です。近年はAIを活用した画像解析により、製品ばらつきによる誤検知を抑えつつ、高い検出精度と作業効率を両立する動きが加速しています。
  • 色彩選別機
    色彩選別機は、カメラを用いて食品の色や表面状態の違いを識別し、異物や不良品を自動で排除する装置です。近年はAIを活用した画像解析により、微細な色ムラや目視では判断しづらい混入物の検出精度が向上しています。
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IoT・AIによる異物混入の予防

異物混入対策は、これまで「発生した異物を検出する」ことが中心でした。しかし近年は、IoTやAIを活用し、異物が“混入する前に防ぐ” 方向へと進化しています。

これらの技術は、現場データの可視化や自動判定を通じて、人手では気づきにくい兆候を早期に把握し、トラブルを未然に回避するための強力な手段となっています。

IoTセンサーによる設備状態の常時監視

異物混入は、機械の劣化や部品の破損がきっかけで発生することも多くあります。IoTセンサーを設備に取り付けることで、以下のような“異常の兆候”をリアルタイムで取得できます。

  • 振動の増加(軸ブレ → 金属片の脱落リスク)
  • 温度上昇(ベアリング摩耗 → 破損リスク)
  • 電流値や負荷変動(異物の噛み込み兆候 など)

こうしたデータを蓄積することで、壊れる前にメンテナンスを行う予知保全が実現し、設備由来の異物混入を大幅に減らせます。

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AI画像解析による異物の自動検知・予兆検出

AI画像解析は、食品工場の異物混入対策を強化する技術として広く注目されています。金属検出機やX線検査機、色彩選別機では見つけにくい透明樹脂片や微細な欠け、付着物なども、AIが“正常な状態”を学習することで高精度に検出できるようになります。

また、汚れや形状のばらつき、光の反射といったノイズを踏まえて判断できるため、従来では見逃されがちなわずかな違いも識別可能です。

さらにAIは、異物が写っていなくても外観の変化から「異物混入の前兆」を捉えられる点が特徴です。包装フィルムのゆがみや噛み込み、ラベルの浮き、光沢の変化など、初期段階の異常を検知し、異物混入の発生を未然に防ぐことができます。

このようにAI画像解析は、従来装置の代替ではなく、苦手領域を補完し検査ライン全体の精度を高める強化技術として効果を発揮します。

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食品工場の異物混入事例

食品工場では、異物混入対策を講じていても、人的要因や環境要因、設備トラブルなどが重なり、実際に異物混入が発生するケースがあります。ここでは、食品工場での代表的な異物混入事例を紹介します。

作業スタッフの毛髪が混入した事例

食品工場で最も頻発する従業員由来の異物混入は、「毛髪の落下」です。充填工程を担当していた従業員がヘアネットを完全に装着できておらず、体勢を変えた際に毛髪が製品へ落下したケースがあります。

毛髪は軽量で検査装置でも検知しにくく、発見が遅れるとロット全体の廃棄や追加検査が必要になるため、食品工場にとって大きなリスクとなります。

このトラブルを受けた工場では、入室前の装備確認を二重チェックに変更し、休憩明けには担当リーダーが装着状態を再確認する仕組みを導入しました。毛髪混入は“わずかな装着不備”が原因で発生するため、従業員教育と日常点検の徹底が最も効果的な対策となります。

外部からの虫が混入した事例

食品工場で特に多い害虫由来の異物混入は、小型昆虫の侵入による混入です。夏場に排水トラップが乾燥し、そこから小型昆虫が包装エリアに侵入することがあります。作業者が気づかないうちに製品へ付着し、そのまま包装されてしまったケースがあります。昆虫混入は消費者クレームにつながりやすく、工場全体の衛生評価を大きく損なうリスクがあります。

この問題が発生した工場では、排水トラップの定期給水のルール化、ライトトラップの設置数増加、エリア別の害虫モニタリング強化などを実施しました。昆虫は季節・設備環境・清掃状態によって影響を受けやすいため、日常管理と環境改善を組み合わせた多層的な対策が効果的です。

設備の老朽化で金属片が混入した事例

ミキサー内部のボルトが長年の稼働で摩耗し、運転中の振動によって微細な金属片が剥がれ落ち、製品に混入してしまいました。金属片はX線検査で検出されたものの、複数ロットの再検査・廃棄が必要となり、生産計画全体に大きな影響を与える結果となりました。

このケースを受け、工場では設備点検の周期を見直し、摩耗しやすいパーツを予防交換の対象に指定しました。さらに、部品交換履歴をデジタル管理し、劣化傾向を可視化する仕組みを導入することで、設備由来の異物混入リスクを大幅に低減しました。

設備トラブルは発見が遅れると重大クレームにつながるため、定期点検と記録管理の強化が不可欠です。

まとめ

食品工場における異物混入対策は、品質・安全性の確保と企業の信頼維持に直結する重要な取り組みです。人・設備・環境・管理体制を整理し、HACCPやSOP整備などを含めた組織的な対策を計画的に実行していく必要があります。

近年は、異物検査装置やIoT・AIの活用により、検知だけでなく予防まで踏み込んだ対策が可能になっています。属人化を抑え、再発防止と品質安定を実現するためには、工程や課題に適した仕組みを構築し、運用を通じて効果を高めていくことが重要です。

ASTINAでは、IoT・AIを活用した異物検知・予防ソリューションを提供しています。AI外観検査装置「OKIKAE検査ボックス」などにより、属人化しがちな検査工程の自動化・高度化が可能です。

食品工場の異物混入対策や検査体制の見直しをご検討の際は、ぜひASTINAへお問い合わせください。

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