ToFセンサとは?使用例や導入方法などを分かりやすく解説

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ToFセンサは対象物までの距離を測定するセンサで、安全装置やレベルセンサ、空間にある物体の認識など、幅広く使われています。ここではToFセンサの仕組みや活用事例、メリット、デメリットや他のセンサとの違いなどについて解説します。

目次

ToFセンサとは

工場センサー

ToFセンサとは、非常にシンプルに表現すると「物体までの距離を検出するセンサ」です。特定の範囲内にある物体に対して、センサからの距離を検出し、データとして処理できるようにするものです。

人感センサとして、人や人体の進入、接近を防止するセンサに使われたり、人の数や動きの認識に使われたりします。また物体との距離を測るためにも使われ、レベルセンサとしても使われるだけでなくVRにも活用されています。

ToFセンサの仕組み

ToFとは「Time of Flight」の略で、光の飛行時間を意味します。センサから放出された光が物体に当たり、返ってくるまでの時間を計測し、物体までの距離を認識します。

例えば人や人体の進入防止に使用される場合、放出された光を遮るものが領域内になければ、光は領域の反対側まで進み、そこから戻ってきます。しかし、もし領域内に人や人体の一部が進入すると、光はそこで跳ね返り、戻ってくることになります。そのため、進入がなかった場合に比べて光が返ってくるまでの時間が短くなるというわけです。

このように、光の飛行時間を計測し比較することで、ToFセンサは、被写体までの距離を測るだけでなく、被写体の形状や動きを3次元的に認識するアプリケーションにも利用されます。

1DToFと3DToF

ToFセンサは、大きく2つの種類に分けられます。「1DToF」と「3DToF」です。

1DToF

1DToFは特定の点までの距離を測るものです。光を放出し、その反射光を使って測定しています。人が進入したことの検知や、液体や粉体の量を測るレベルセンサなどとして使われます。日常生活でよく見る例として、普段は休止しているが、人が来ると自動で動き出すエスカレーターなどがあります。

3DToF

3DToFは特定の点だけでなく、広くカメラのように画像で距離情報を得るのが特徴です。狭い領域ではなく、定められた空間全体にある物体との距離を測定します。

ToFセンサの使用事例

FAセンサー

ToFセンサは産業分野をはじめ、さまざまな分野に使用されています。特に工場の中など、製造業において見られるToFセンサの、代表的な使用例を紹介します。

事例1:昇降台のリフト量制御(1DToF)

重量のある製品を工場内で上下に移動させるとき、昇降台が使われるケースがあります。昇降台を動かす量(リフト量)は、ストッパーなどで機械的に制御する方法がありますが、ToFセンサによって昇降量を計測、任意のリフト量で制御する方法もあります。

事例2:ワーク着座確認(1DToF)

生産ラインにおいて、ワークが治具に着座したのを確認するためにもToFセンサが利用できます。治具の上部にToFセンサを設置し、センサから治具までの距離を測定できるようにしておきます。ここにワークが着座すると、センサからの距離が変化します。ワークが正しく着座した際の距離も記録しておけば、着座異常の検知も可能になります。

事例3:作業者の動線外れの検出(1DToF)

作業者の動作の監視にもToFセンサは活用できます。機械の可動範囲への進入防止の他、決められた範囲内で行う動きに対し、通常と違う動きをして動線から外れたことを検出するのも可能です。そうした事故防止装置や、非常停止装置などの安全装置としてもToFセンサは利用されます。

事例4:空間にいる人数のカウント(3DToF)

空間全体の物体の形や大きさ、距離をデータ化できる3DToFを使用すれば、特定の空間にいる人間の数をカウントすることもできます。ToFセンサにより空間にある物体の形を認識し、AIなどと合わせて「人」を判別して、その数を数えるのです。作業空間内にいる人数を確認するのに使用されます。

事例5:寸法や体積の測定(3DToF)

3DToFを三次元測定機のように利用し、寸法や体積の測定ができます。3DToFであれば、空間において、どれくらいの距離に、どこからどこまで物体があるかを測定できます。これを利用すれば、寸法や体積も測定できるのです。製品の種類の判別や適合する容器の選定などに生かせます。

ToFセンサのメリット

Iot

ToFセンサにはさまざまなメリットがありますが、代表的なものとして次のような点が挙げられます。

長距離の計測が可能

ToFセンサを使うと長い距離の計測ができます。センサから測定物まで100m以上あっても測定できる機種もあります。そのため、工場の大きなシャッターの下に設置する人感センサのように、長い距離で検知したい場合にも使用可能です。

設置の自由度が高い

ToFセンサは、光を放出する部品と反射して返ってきた光を受ける部品から成る、シンプルな構造です。そのためセンサが小さく、さまざまな部位に設置しやすいのが特徴です。また光を利用しているため、水平方向や垂直方向、斜め方向など、向きを問わずに利用でき、設置の自由度が高いのも特徴です。

暗くても利用できる

3DToFは画像認識にも似ていますが、ToFセンサは暗いところでも使用できるのがメリットです。画像認識の場合、カメラが測定対象物を鮮明に捉えなければならないため、撮影に適した光源を用意する必要があります。しかしToFセンサであれば、センサから放出された不可視光線を用いての測定もできるため、暗い場所でも測定できます。

他のセンサとの違い

センサー違い

ToFセンサと似たような働きをするセンサは、他にもいくつか挙げられます。測定の範囲などが異なるため、1DToFと3DToFに分けて、似たようなセンサとToFセンサとの違いを解説していきます。

1DToFと似ているセンサ

・三角測量センサ(BGS)との違い
1DToFと測定方法がよく似ているセンサとして、三角測量センサがあります。どちらも測定対象物に光を照射し、戻ってきた光を受け取ることで距離を測定しています。しかし三角測量では受光位置の差で距離の差を検出します。そのため測定対象物との距離が開くと、変位量が検出しにくくなるというデメリットがあります。一方でToFセンサは光の飛行時間を利用するため、対象物との距離によって検出精度が左右されません。

3DToFと似ているセンサ

・ストラクチャードライト
ストラクチャードライトは、対象物に格子状の光を照射し、それを他のカメラで撮影することで物体の大きさや形状を認識する方法です。ToFと比較して、特に奥行き方向の精度がいいのがメリットです。

しかし設置のコストではToFの方が安くなります。さらにToFは、ストラクチャードライトに比べて周囲の光の影響を受けにくいというメリットもあります。

・ステレオビジョン
ステレオビジョンは、人間の目のように並んだ2つのカメラから得た画像を処理し、対象物の形状や奥行きを認識する方法です。コストは低く、センサの構成も単純なのがメリットです。

一方でToFセンサはステレオビジョンよりも奥行きの測定精度が高く、さらに暗い場所でも測定できるというメリットがあります。またToFセンサのほうが演算処理がシンプルなため、システムが作りやすいのも特徴です。

ToFセンサを導入する際の注意点

データ収集

メリットも多いToFセンサですが、センサごとに固有のばらつきや誤差要因を持っています。これはToFセンサの仕組みに由来するため、センサの製造工程などで完全になくすことはできません。導入に際しては次のような課題が発生するため、それぞれに対し補正処理を行う必要があります。

実際の距離に対し、出力される距離に歪みが出る

放出される光が矩形波であった場合、実際の距離に対し、出力される距離に歪みが出ます。そのため、この歪みを補正するのが課題になります。

温度変化で出力値が変動する

ToFセンサは、周囲の温度が上昇すると出力される距離の値が増加する性質をもっています。そのため、可能であれば測定環境の温度を一定に保つ必要があります。屋外のように気温のコントロールができない場合には、制御によって出力値の変動を抑制する必要があります。

対象物の反射率

ToFセンサでは、対象物に反射して返ってきた光を利用して距離を測定します。そのため、反射率の低いものと反射率の高いものを、同時に測定するのが難しいという課題があります。例えば、白と黒の物体を同時に測定しようとした場合、どちらかの反射率に基準を合わせると、他方の計測に誤差が出てしまうのです。対象物の素材や色などに配慮するか、制御などで調整が必要です。

まとめ

ToFセンサは、放出した光が測定対象物で反射し、戻ってくるまでの時間を測定することで、対象物との距離を検出するセンサです。非接触で物体との距離の変化をチェックするのに適したセンサであるため、特定エリアへの進入防止センサやレベルセンサ、ワークの着座センサなどにも利用されます。1DToFと3DToFがあり、3DToFでは特定のポイントだけでなく、空間全体の物体の量や大きさなどが検出できます。

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