湿度センサとは?仕組みや種類、活用事例などの基礎知識を分かりやすく解説

湿度センサ

湿度は日常生活にも深く密着した数値の一つです。生活空間の快適さを表わす数値としても活用され、湿度を測る機器は日常生活でも数多く利用されています。

また湿度は、機器や食品、微生物の活動などにも大きな影響を与えます。そのため工場や研究室などでは湿度センサを利用して、湿度をモニタリングする必要があるのです。

今回は、湿度センサの仕組みや活用方法について解説します。

目次

湿度センサとは

湿度

湿度センサとは、雰囲気(周辺の空気)の湿度を測るために利用するセンサです。

例えば、電子機器の組み立て工程では、湿度が高すぎて結露が発生したり、逆に湿度が低すぎて静電気が発生したりすると、機器の破損につながるおそれがあります。そのため工場内の湿度をモニタリングし、適切な範囲になるよう管理する必要があります。

他にも、半導体の製造や保存、吸湿性のある樹脂の加工や保存、マグネシウムや木材の粉末など燃焼しやすい粉末が飛散する工場など、製造現場ではさまざまな場面で湿度のモニタリングと管理が必要になります。

このような場合に湿度センサを用いる方法があります。湿度センサを活用すれば、湿度の推移が自動で記録できたり、加湿や除湿の調整が自動で行えたりと、さまざまなメリットがあります。

そもそも湿度とは

湿度には「相対湿度」と「絶対湿度」の2種類があります。一般的に使用されるのは相対湿度の方ですが、それぞれの定義は次のようになっています。

相対湿度

相対湿度とは、ある温度の空気中に含まれる水蒸気の量の、飽和水蒸気量に対する割合です。学校などで「湿度」の定義として習うものでもあります。飽和水蒸気量は気温によって変化するため、空気中に含まれる水蒸気の量に変化がなくても、温度が変化すれば湿度も変わります。室内の環境を表わしたり、天気予報などにも使用されたりする、一般的なものです。

結露のしやすさや静電気の発生しやすさなどの指標になるため、製造現場における湿度のモニタリングでも相対湿度が用いられています。

絶対湿度

絶対湿度は1立方メートルあたりに含まれる水蒸気量を示したものです。飽和水蒸気量にかかわらず、空気中に含まれる水蒸気量を表わす数値であるため、気温が変わっても、水蒸気量に変化がなければ変化しません。

人の肌感覚としての「湿り気」は、相対湿度よりも絶対湿度に近いといわれています。

湿度の測定方法

湿度計

湿度は工業的な場面以外でも古くから測定されてきました。湿度センサを使う以外の方法もたくさんあります。ここでは次に挙げるような代表的な湿度の測定方法を紹介します。

  • 乾湿球
  • 機械式
  • 熱伝導
  • 電磁波吸収
  • センサ

乾湿球で測る

同じ種類のガラス製温度計を2本並べて設置します。片方はそのまま、もう片方は他端を水瓶に浸したガーゼで包んだものです。湿ったガーゼから水分が蒸発する際に熱を奪うため、湿球のほうが温度が低くなります。この温度差から表を参照して湿度を求めます。

機械式測定機で測る

空気中の水分を吸収し、伸び縮みする物質、具体的には毛髪やナイロンフィルムを用いたものです。てこの要領で変位量を拡大し、針で表示します。針を記録紙に当てることで時間的変化の記録が可能で、博物館の展示ボックス内などで用いられてきました。

空気の熱伝導で測る

空気は、湿度によって熱伝導率が変化します。例えば1気圧25℃のとき、相対湿度0%の空気の熱伝導率は0.026W/mKですが、相対湿度100%の空気では、0.021W/mKになります。この違いから湿度を求めます。

空気の電磁波吸収量で測る

赤外線やマイクロ波など電磁波は、空気中の水分によって減衰します。そこで空気中に電磁波を放出し、減衰量を測定して湿度を求めます。

湿度センサで測る

湿度によってインピーダンスや静電容量が変化する物質を使い、これを素子として用いて湿度を検知するものです。湿度センサについては次の章にて詳しく解説します。

湿度センサの種類

センサー

湿度センサは一般的に、感湿材料を電極で挟んだ、コンデンサのような構造になっています。ここに電気を流し、電気的な性質の変化を検知します。感湿材料には高分子フィルムやセラミック焼結体が用いられます。

湿度センサは、湿度の測定方法によって、抵抗式と容量式の2つの種類に分けられます。

抵抗式

空気中の水分を吸収したり、空気中に水分を放出したりするのに伴って、電気的な抵抗値が変化する感湿材料を利用します。高分子素材やセラミックなどがよく使われます。

構造が簡単で、比較的安価であること、そして大量生産しやすいことがメリットです。一方で測定精度のばらつきが大きく、応答速度が遅いのがデメリットです。

容量式

吸湿や脱湿によって感湿材の静電容量が変化することを利用したセンサです。感湿材には高分子膜が使われます。応答速度が速く、測定可能範囲が広いというメリットがあります。相対湿度0%から100%まで測れます。直線的な出力が得られるため、演算処理を軽くできます。

湿度センサの活用事例

家電

湿度センサは、私たちの生活の中でもよく使われている、とても身近なセンサです。工場や倉庫の湿度管理に使われる以外にも、さまざまな機器に取り付けられ、活用されています。

電子レンジ

電子レンジにも湿度センサが使われています。食品を加熱すると水蒸気が出て、庫内の湿度が変化します。この仕組みを利用し、オート調理などの制御に使われます。

電子レンジの湿度センサの多くはセラミックを利用した抵抗式です。これは、加熱により吸湿をリセットできるためです。同じような仕組みで、加工現場で活用される湿度センサもあります。

エアコンの加湿、乾燥の制御

湿度が調整できる機能をもったエアコンにも、湿度センサが使われています。工場などの製造現場で湿度の管理が必要な場合には、エアコンにより温度と湿度の両方が管理されているケースも少なくありません。

恒温槽

機器や製品の試験では、高温多湿の環境で機器の劣化を促進させて、そのような環境でも不具合なく使用できるかどうかを確認します。そのような試験に使う恒温槽でも、一定の湿度に保つために湿度センサが使われています。

湿度センサの選び方

データ

湿度センサは種類ごとにメリットやデメリットがあるため、利用する環境や目的によって向いている製品が異なります。センサを選ぶ際にあらかじめ確認しておくべき内容を以下に示します。

想定される湿度の範囲

想定される湿度の範囲や使用する気温などは、湿度センサの選定の際にとても重要な情報になります。例えばセラミックセンサは比較的高い温度まで測定できますが、低い温度にはあまり適しません。0度以下になるような低温環境下での測定には、薄膜センサのほうが適しています。

応答速度

温度センサは、素子が周囲の水分を吸収したり、素子が空気中に水分を放出することに伴う変化によって湿度を測定します。そのため素子の応答性も重要な選定ポイントです。特に低い湿度から高湿に変化するときと、高い湿度から低湿に変化するときで応答性が変わるセンサもあるため、注意が必要です。容量式のほうが応答速度の点では有利です。

大きさや実装のしやすさ

湿度センサは、コンバータなどの計測部と併せて使用しなければいけません。コンバータチップが内蔵されている製品であれば、設計を各個で行う必要がありません。

まとめ

湿度センサは基本的に、感湿材を電極で挟み、感湿材が吸湿/放湿することによって変化する静電容量や抵抗から湿度を検知します。湿度計として使われるだけでなく、エアコンや恒温槽の湿度調整や、電子レンジなどにも活用されます。湿度センサを選ぶ際には、使用する温度や湿度、応答性などによって選定しましょう。

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