PoCとは?試作品との違いや目的、実施の流れや注意点を解説

この記事はこんな人向け
  • PoCとは何の略?なんて読むの?意味は?
  • PoCとはどんな流れで何をやるのか知りたい
  • PoCを行うメリットや注意点を知りたい

新しい製品やシステムを開発する前に、PoCを実施する企業も多くなっています。PoCはもともと製薬会社や製造業、IT企業などを中心に行われてきました。近年では、IT技術の進歩やユーザーニーズの多様化にともなって、いろいろな業種で新製品や新システム開発の際にPoCが導入されています。

これから新製品やシステム開発を考えている人のために、PoCの概要や実施の目的、PoCの流れや注意点を解説します。新製品や新しいシステムの実現可能性や実現性や機能・使い勝手、UI/UXを検証したいときや、IoT技術を取り入れたモノづくりにはじめて挑戦したいときにPoCは必須です。ぜひ本記事を新たなプロダクトを生み出す一歩として、参考にしてもらえると嬉しいです。

目次

PoCとは

POC

PoCとは“Proof Of Concept”の略で、日本語では「概念実証」と訳されます。文字とおりピーオーシーといいます。

実際には新しい製品やシステムのプロジェクトの前に、製品やシステムの有効性を検証する目的で行われる「実証実験」をPoCと呼ぶことがほとんどです。

例えば、新製品開発の前にテスト販売やモニター募集をすることも多いと思います。これは、正式発売の前に新製品が本当に売れるかどうか検証するPoCに当たります。システム開発においては、機能や性能を限定しつつ実際に製品を作成し、機能は達成できるかの評価を行うのがPoCとなります。

特に近年では、IoTなどのシステム開発おいてPoCが欠かせないものになりました。

PoCと試作品の違いとは

実際の製品やシステムを完成させる前に、試作品を作って実際の製品の生産や量産につなげるための「試作」というアプローチがあります。ですがPoCと試作の違いが分からない人も多いのではないでしょうか。

PoCは実効性の検証を行うのに対して、試作(プロトタイプ)は製品やシステムの実現を前提に、改良しながら製品やシステムを完成品へ近づけていくプロセスを指します。PoCも数ある試作のなかのひとつと言えますが、PoCと試作は製品やシステムを「検証する」か、「形にするか」という違いがあります。

そのためPoCが「製品やシステムをこのように作ろう」という前提が固まる前に検証を行うのに対して、試作は「一定の要件を満たし具体化したプロトタイプ」という違いがあります。

PoCを行う目的

PoCを実施する主な目的は以下の3つです。

目的
  • 開発のリスクを回避して確実性を高める
  • 商品開発やプロジェクトのスムーズな進行
  • 実効性・実現可能性・UI/UX検証のため

近年ではニーズの多様化やIoTなどのITシステム開発が複雑化したことで、開発フェーズで不確実な問題が多く発生するようになりました。以前はリスクをある程度考慮した上で開発が行われていましたが、予測できない問題も発生します。当然、想定していなかった問題が発生すればそれまで進んでいた開発がストップしてしまう、ということにも繋がります。

予めPoCを行うことで、早い段階で開発の不確実性の発見やリスク回避に繋がります。不確実性によって費用や時間などのコストを無駄にせず開発を進める為にも、PoCを行うことは非常に重要です。
また、PoCを行うことで製品やシステムのコンセプトがより明確になり、プロジェクトが円滑に進められるのもメリットの一つです。PoCで取得したデータを活用すれば、ユーザーのニーズを構想段階から取り入れつつ開発を進められます。

PoCの流れ

PoCの流れ

PoCは以下の流れで進んでいきます。

  • PoCの目的設定
  • 実施/検証内容の設定
  • 実施/検証内容の実証
  • 実証結果の評価、及び次フェーズに繋げる

PoCの目的設定

まず、PoCの目的を明確にします。PoCは新しく作り出したい製品やシステムが、実現可能なのか検証するのが目的です。実現可能か判断するために、どのようなデータを取得する必要があるのかを予め決めておく必要があります。PoCによって何の効果やデータが得たいかを決めることこそが、PoCの成果を最大限高めるためのポイントになります。

実施/検証内容の設定

PoCの目的としてどのような効果やデータを得たいかを設定したら、次にPoCの具体的な実施内容や検証方法などを決めます。実施内容は必要最低限の要件定義から試作化しつつ、ユーザー目線や使用環境に近いものとする事が重要です。リアルなユーザー目線や使用環境を元に検証を行うことで、そこで得た情報を元に、試作や開発、その後の量産フェーズの展開について有益なフィードバックを行う事ができます。

実施/検証内容の実証

上記で決定した実施内容や検証方法を踏まえて、PoCを実施します。可能な限り実際の使用を想定したユーザー、環境、状況を再現して検証を実証しましょう。実際に製品やシステムを使用するユーザーや状況に沿った上での実施の方が、より詳細かつリアルなデータを取得できるからです。

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実証結果の評価、及び次フェーズに繋げる

PoCを実施したのち、結果データを検証します。結果データからは製品やシステムを実現した場合の実用性や起こり得るリスクや課題の把握が可能です。検証データから分かる実用性やリスク及び課題などを検証 / 評価し、製品開発 / システム開発等の次フェーズに対して、どのような形でフィードバックしていくかを決定します。

また、PoCを実施した結果、課題や問題が発覚した場合は、新しくPoCを設定して再検証を行うかを判断します。

PoCにおける注意点

PoCをおこなう上で心掛けたい注意点は以下の3つです。

注意点
  • スモールスタートを心がける
  • 目的に沿って検証条件を決める
  • 本番環境を想定して検証を行う

注意点1:スモールスタートを心がける

PoCは小さく、すばやいスモールスタートを心がけることが成功の秘訣です。

大規模なPoCをしてしまうと時間もコストも膨大になってしまい、PoCを行う目的が薄れてしまいます。スモールスタート、かつスモールステップの積み重ねを意識することで、PoCの先にある新製品やシステム開発の道が見えてきます。

PoCの検証を実施する際には、時間もコストも抑えるために検証する環境を限定して行う事が多くあります。

注意点2:目的に沿って検証条件を決める

PoCの目的により環境を限定することで、よりスピーディーに進めることが可能となります。

とはいえ、PoCの検証環境を不必要に限定してはPoCの目的を達成する事が出来ませんので、あくまでPoCの目的に沿った検証を行う必要があります。

PoCを初めて行うため何をすればいいか分からない、検証を行う環境条件の設定や準備が難しいという場合も多いのではないでしょうか。もしPoCの導入/実施に際し、導入課題を感じる場合は、一度ASTINAへご相談いただければと思います。

注意点3:本番環境を想定して検証を行う

PoCを行う際は、本番環境と同様の条件下を検証を行う必要があります。

本番環境と乖離していると、信頼性に欠けるデータが収集されるおそれがあります。この場合、PoCを行い、いざ本番環境に導入するという段階で想定していなかった事象に見舞われるケースもあるでしょう。

確かに本番環境であれば同条件ではあるのですが、リスク管理の観点(生産ラインが止まるなど)から、本番環境からは切り離した環境で、なるべく同条件を再現するのがよいでしょう。

ASTINAでのPoCを含む開発事例

ASTINAでは、PoCを含む開発を多く行った実績があります。「既存の製品にIoTを実装したい」「IoTを活用して現場の生産性を上げたい」など理由はさまざまです。以下では、ASTINAで取り組んだPoC案件について、開発時に留意した点などを細かくまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

弊社では、IoTのPoCサービス(らくPoC)をやっている関係でご相談を多数いただいております。

PoC事例1:小型センサー・IoTクラウドシステムの開発

小型センサ

加速度センサ搭載デバイスとゲートウェイ機器2点の試作・量産を行い、100msごとの加速度データをお客様管理サーバーに送信するシステムを開発しました。
デバイスのサイズは、1円玉2枚分以下まで小型化し、ゲートウェイは開発スピードを優先するため、RaspberryPi※2を採用しています。
PoC時には既存の製品を組み合わせた簡易的な試作品を開発し、通信や計測で不具合が発生しないかの検証を行いました。

※2 RaspberryPiとはシングルボードコンピュータと呼ばれる小さなハードウェアです。

ASTINAの事例

PoC事例2:屋外用環境ロガーの開発

環境ロガー

屋外に設置してセンサ値の時間変化を測定できるデバイスの試作を行いました。気温・湿度・照度センサの3つのセンサを搭載し、数分間隔で測定したデータをBLE通信でスマホに転送します。お客様は、このデバイスを屋外作業現場に設置して、熱中症の予防対策などへ活用することを予定していました。
屋外での使用要件があったため、防水・防塵設計を施し、雨の日でも片付けが不要で長期的な測定ができるようにしてあります。また、液晶画面を搭載することでスマホが無くてもデータを確認可能です。
PoC時にはBLEの通信試験に加え、センサで計測する気温・湿度・照度の検証を行いました。

ASTINAの事例

PoC後の流れ

PoCから量産までの流れを示した図

量産を見据えてのPoCの場合は下記の流れになります。

  1. 原理試作(PoC)
  2. 機能試作(EVT1 /EVT2 /EVT3)
  3. 設計検証試験(DVT)
  4. 生産検証試験(PVT)
  5. 量産試作(PP)
  6. 量産(MP)

原理試作(PoC)~ 生産検証試験(PVT)までを試作、量産試作(PP)~量産(MP)を量産として行います。
製品やシステムが実現できるかをPoCで検証後、本格的な試作に入ります。PoCの原理試作を踏まえて、製品やシステムが実際に動くかどうかを検証しながら機能試作(EVT)をEVT1~3の段階を踏んでバージョンアップしていきます。

機能試作が仕様通りに動くかを検証する設計検証試験(DVT)では、金型成形した部品を用いた試作品が作られます。品質試験の実施、許認可のプレ試験の実施、量産品で使う部品リスト定着、量産工場・量産部品の品質確認、量産方法(手順)の確定という流れを、基本的には4週間ほどかけて行います。

設計検証試験後(DVT)は、生産検証試験(PVT)として生産検証試作を用いて、大量生産に適した設計になっているか検証します。

PVTで製品化を踏まえた試作品が完成したら、量産の段階に入ります。PVTでできあがった試作品を量産と同じ部品や部材を使って50~100台程度の少量量産を行います(PP)。

PPで大量量産に移行しても問題ないと判断されれば、大量量産段階(MP)に入ります。PoC~MPまでの試作・量産フェーズを通じて完成した製品が出荷され、市場で流通されます。

新製品の開発でPoCを行った後の流れの詳細は、下記リンクをご参照ください。

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PoCパッケージのご紹介(IoT特化型)

PoCサービスの画像

弊社ではIoTの新製品を手助けするPoCパッケージ(サービス名;らくPoC)をご用意しています。「IoTの企画はあるが、果たして実現可能なのか」とお悩みのご担当者様はお気軽にご相談ください。

基本的に、IoTはPoCを行うことが大事だと言われています。はじめに実現できるのかの可能性を検討しておかないと、開発が進んだ段階でプロジェクトが頓挫する可能性もあるからです。

まずは小さく初めて、すこしずつ改善していくというのがIoTの基本だと言えるでしょう。らくPoCは、お客様が構想するIoTの環境をスピーディーに構築し、すぐに検証をできる状態をご用意いたします。サービスの詳細については、以下のページをご覧ください。

ASTINAのサービス

IoT製品の実証実験を手助けするPoCパッケージ

まとめ

PoC開発ならぜひ一度ASTINAへご相談を!

PoCは目的設定や実施、検証の際に関係部署やパートナー企業、テスターと、多くのリソースが必要となり、各プレイヤーが関わり合います。ノウハウがないとPoCは円滑に進行できません。ASTINAでは、システム・デバイス開発実績が多くあり、PoCのためのプロトタイプ試作実績も豊富にあります。PoCの時点で、実際に動く製品・システムのご提供が可能ですので、コストや期間の無駄がなく、スムーズかつ有益なPoCが実現できます。PoCだけでなく、その後量産を踏まえた試作もそのままお任せいただけます。

ASTINAではお客様とのコンサルティングの際に課題や要望等を綿密にヒアリングしています。製品やシステムについて何でもご相談いただき、しっかり目線合わせをした上で要望に沿った提案を行っています。PoCを検討の際は、お気軽にご相談ください。

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