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電波センサーとは?|原理仕組みと種類・各業界での活用事例まで徹底解説

この記事はこんな人におすすめ
  • 非接触で距離や動きを測定したいが、どんなセンサーを使えばいいか迷っている
  • 周囲の状況に左右されにくいセンサーを探している
  • 工場や設備の自動化に使えるセンサー技術を比較検討したい

設備の自動化や省人化が進む今、正確かつ非接触で測定可能なセンサー選びに悩んでいませんか?

電波センサーは、過酷な環境下でも安定した性能を発揮し、多様な測定ニーズに対応します。

本記事では、電波センサーの原理・仕組み・特徴から、業界ごとの活用事例まで、導入に役立つ情報を徹底的にご紹介します。

目次

電波センサーとは

電波センサーは、電波を利用して物体や環境の状態を検出するセンサーの一種です。

電波は、空間を伝わる電磁波の一形態であり、光よりも波長が長く、さまざまな物体を通過したり反射したりする特性を持っています。この特性を活かして、電波センサーは物体の位置、動き、さらには液面の高さや振動などを非接触で測定することができます。

また、電波センサーは、非接触でデータを収集できるため、他のセンサー技術と比べて非常に高い利便性と精度を持っています。

電波センサーの仕組みと原理

電波センサーがどのような仕組みで情報を取得し、どのような物理的原理にもとづいて測定を行っているのかについて詳しく解説します。

電波センサーの仕組み

電波センサーは、次のような基本的な仕組みで対象物を検出・測定します。

  1. 送信:センサーから高周波の電波が発信されます。
  2. 反射:電波が対象物に当たり、一部が反射されます。
  3. 受信:反射された電波がセンサーに戻り、受信部で捉えられます。
  4. 解析:反射波の到達時間や周波数の変化(ドップラー効果)をもとに、対象物までの距離、動き、速度などを解析します。

電波センサーを用いた測定の基本原理

電波センサーの測定原理は、主に以下の2つに分類されます。

  • 時間計測による距離測定

対象物に電波を発射し、跳ね返ってくるまでの時間を測定することで距離を算出します。この方式は、レベル測定や障害物検知などに広く使われます。

  • ドップラー効果を利用した速度測定

移動する物体に当たって反射した電波は、静止時とは異なる周波数で戻ってきます。これは「ドップラー効果」と呼ばれる現象で、この周波数の変化から対象物の速度や移動の有無を測定することができます。

自動車の衝突防止レーダーや人感センサーなど、多くの場面でこの原理が活用されています。

電波センサーの特長

  • 非接触で計測が可能

物体と直接接触することなく、遠隔で情報を得ることができるため、特に動きや距離を正確に測定したい場合に適しています。

  • 高精度

近距離でも高精度で測定が可能であり、小型の物体や微細な動きの検出にも対応できます。

  • 高い耐環境性

電波は、煙、霧、ほこりなど、他のセンサーが計測しづらい環境でも比較的安定して動作するため、過酷な環境での使用にも適しています。

電波センサーの基本的な機能

電波センサーは、周囲の物体から反射した電波を検出して情報を得る技術です。この技術は、非接触型でありながら、非常に高精度で動作するため、さまざまな産業で活用されています。電波センサーの基本的な機能には、以下のような特徴があります。

物体検出

電波センサーは、物体の有無を検出する機能を持っています。送信した電波が周囲の物体に当たり反射することで、その反射波を受信し、物体が存在するかどうかを判断します。この機能は、障害物の検出や位置の特定に使用されます。例えば、工場の自動化システムで製品の位置を正確に把握したり、物流での在庫管理に利用されたりします。

距離測定

電波センサーは、物体との距離を高精度で測定する能力も備えています。送信された電波が物体に当たり、反射して戻るまでの時間を計測することで、物体との距離を算出します。この機能は、AGV(自動搬送車)やロボットの位置決めに役立つほか、製造業での精密な距離計測にも利用されています。

動きの検出

電波センサーは、物体の移動を感知することができます。物体の動きが電波の反射に変化をもたらすため、その変化をリアルタイムで捉えます。これにより、製造ラインや物流施設における製品や貨物の移動を追跡することができ、効率的な運用が可能になります。

障害物回避

電波センサーは、物体の位置をリアルタイムで検出し、その情報を基に障害物回避を行うことができます。特に自動運転車両や自動化機器において、障害物との衝突を避けるための重要な役割を担っています。電波センサーが提供する距離データを使って、動的に周囲の環境を把握し、最適な動作を選択することができます。

電波センサーの種類

電波センサーは、その仕組みや使用される電波の性質によってさまざまな種類に分けられます。大きく分けると、使用する電波の「周波数帯」による分類と、対象物の動きや位置を測定する「検知方式」による分類があります。

以下では、それぞれの分類と代表的なセンサーの特長について詳しく解説します。

周波数帯による分類

電波センサーは、周波数帯が異なることで、検出距離や精度、透過性などの特性が変わり、用途や適用範囲も異なります。代表的なものとして、比較的低い周波数帯を使う「マイクロ波センサー」と、高周波でより細かい検知が可能な「ミリ波センサー」があります。これらのセンサーは、それぞれの周波数帯の特性を活かし、さまざまな産業分野で活用されています。

マイクロ波センサー

マイクロ波センサーは、一般に3GHz〜30GHzの周波数帯を使用する電波センサーで、比較的長距離の対象物を検知することに優れた技術です。遮蔽物の影響を受けにくく、光や音に頼らずに検知できるため、屋内外を問わずさまざまな環境で安定した検出が可能です。

物流や交通インフラ、セキュリティ分野などで幅広く利用されており、たとえば倉庫内での侵入者検知、屋外での車両検出、駅や踏切での人の滞留監視などに用いられています。工場では、搬送システムの障害物検出や作業エリアの人検知など、安全管理や設備の自動制御に活用されており、信頼性の高い運用が求められる場面でも安定した性能を発揮します。

また、防塵・防水性能に優れたモデルも多く、雨・霧・埃といった環境変化にも強いことから、屋外設備や過酷な環境下での使用にも適しています。さらに、土壌の含水量測定や水位検知といった農業・環境モニタリングにも応用されています。

ミリ波センサー

ミリ波センサーは、30GHz~300GHzの高周波を使用し、マイクロ波センサーよりも高精度な距離測定や動作検出が可能な技術です。小型ながら高精度な検知ができるため、自動運転や産業用ロボット、スマートファクトリーなど、精密な制御やリアルタイムの動作検知が求められる分野で活用されています。

自動車分野では、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術において、周囲の障害物や歩行者を検知し、安全運転を支援します。工場では、産業用ロボットの精密な位置決めや動作制御に利用され、自動化や製造工程の効率化に役立っています。また、生産ラインの自動制御や製品検査の高度化を実現し、品質向上やコスト削減に大きな効果をもたらしています。

検知方式による分類

電波センサーは、電波をどのように発信・受信し、対象物の情報を得るかという「検知方式」によっても分類されます。検知の仕組みによって、取得できる情報の種類や精度、適した用途が異なります。

代表的な方式には、動体の速度や動きを検出する「ドップラー方式」、距離や位置を高精度に測定できる「パルス方式」、さらに距離と速度の両方を同時に測定できる「FMCW方式」などがあり、それぞれの特性を活かして幅広い分野で活用されています。

ドップラー方式センサー

ドップラーセンサーは、電波を対象物に照射し、反射して戻ってくる電波の周波数変化(ドップラー効果)を利用して対象物の動きや速度を検出するセンサーです。対象が静止している場合は変化がなく、動いている場合は周波数に変化が生じます。この仕組みにより、移動する物体の有無や移動方向、速度などをリアルタイムで把握できます。

製造業や物流業界では、搬送システムや製品の流れの監視に利用されており、物体の動きや速度を測定することで効率的な生産ライン管理が可能です。また、交通インフラの分野では、車両の速度測定や渋滞監視、踏切や交通管理システムでの使用が一般的です。

さらに、ドップラーセンサーは、気象観測や環境モニタリングでも応用されており、風速や風向きの測定、航空機の速度計測にも使用されています。

パルス方式センサー

パルス方式センサーは、パルス状の短い電波(パルス波)を対象に向けて発射し、その反射波が戻ってくるまでの時間差を測定することで、対象物までの距離を正確に算出する技術です。距離計測に優れたレーダー方式として多くの産業で利用されています。

特徴として、複数の対象物を同時に検知できることや、静止物の検出にも対応できることが挙げられます。そのため、交通インフラにおける車両検知、踏切や高速道路の安全監視、工場の搬送システムの位置測定や衝突防止など、多様な距離計測シーンに活用されています。

また、ミリ波帯との組み合わせにより、より高精度な検出が可能となっており、自動運転車の障害物検出や構造物の変位監視、発電設備の状態監視など、精密性が求められるインフラ・エネルギー分野でも導入が進んでいます。

FMCW方式センサー

FMCW方式センサーは、連続的に発信される電波の周波数を時間とともに変化させ、その反射波と送信波の周波数差から対象物までの距離を測定する方式です。ドップラー方式が主に速度を、パルス方式が距離を測定するのに対し、FMCW方式は距離と速度の両方を同時に高精度で計測できるのが特長です。

FMCWセンサーは、反射波の微小な変化を解析できるため、近距離から遠距離まで幅広い測定レンジに対応可能であり、静止物体と移動物体の識別も可能です。ノイズや干渉に強く、高密度な情報を取得できることから、精度と信頼性が求められる用途に適しています。

活用例としては、自動運転車の周囲監視システムにおいて、歩行者や他の車両の検知、距離測定、速度判定に用いられるほか、工場ではロボットアームの動作制御や搬送物の位置検知、倉庫での障害物回避に利用されています。さらに、ドローンや農業機械での障害物検知、構造物の変位監視など、産業用IoT分野でも導入が進んでいます。

電波センサーの用途・活用事例

電波センサーは、産業分野で多くの用途に利用されており、効率化、精度向上、安全性確保、コスト削減などの目的で活用されています。以下では、各業界における用途・活用事例を詳しくご紹介します。

製造業

  • 異物検出

電波センサーは、対象物に向けて高周波の電波を照射し、その反射波の変化を解析することで異物の有無を判別します。製造ラインにおいては、金属片やプラスチック片といった異物が混入した場合、正常な製品とは異なる反射特性を持つため、異常を即座に検出できます。特に食品加工業や自動車部品の製造現場で、安全性や品質を確保するために広く導入されています。

  • 品質管理

製品の形状や寸法の変化をミリ単位で検出できる点が、電波センサーの大きな特長です。製品に電波を照射し、戻ってくる信号の時間や強度を計測することで、対象の輪郭や位置を高精度に測定します。これにより、不良品の兆候をリアルタイムで把握し、工程内での早期対処が可能となります。

  • 位置および距離測定

自動化された生産ラインでは、ロボットや搬送機器が高精度な位置制御を行う必要があります。電波センサーは、非接触で対象物までの距離を正確に測定できるため、可動機器の動作範囲や停止位置を細かく制御するのに適しています。反射波の時間や位相差をもとに距離を計測することで、安定した動作と工程全体の効率化を実現します。

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物流業

  • 在庫管理

倉庫内での物品の位置や高さを非接触で測定することができ、商品の正確な位置情報をリアルタイムで把握することが可能です。これにより、倉庫内での物品の移動や保管場所を正確にトラッキングでき、適切な補充や出荷管理が行えます。

さらに、商品の在庫数や棚の状況を自動的に更新し、在庫管理システムと連携することで、手作業によるミスや遅延を防ぎ、業務の効率化を実現します。

  • 自動搬送システム

電波センサーを用いて、AGV(自動搬送車)やロボットが倉庫内で自律的に物品を移動させるシステムに利用されます。障害物を回避し、適切な場所に物品を移動させるためにセンサーが重要な役割を果たします。

  • 物流トラッキング

電波センサーは、配送中の貨物に取り付けられたRFタグや無線ビーコンから発せられる信号を受信することで、貨物の現在地をリアルタイムで把握します。電波の到達時間や強度、複数のセンサーからの位置情報を組み合わせることで、トラック内や配送ルート上での物品の位置を高精度に特定します。

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自動車産業

  • 自動運転技術

電波センサー(特にレーダーやミリ波センサー)は、自動運転車に搭載され、車両の周囲に電波を発信し、その反射波を受信することで障害物や他車の距離・速度を検出します。

これにより、車両は自動的に周囲の状況を把握し、進路の選定や減速・停止などの判断を行うことができ、衝突回避やスムーズな運転支援が実現されます。

  • 安全システム

衝突防止システムやアダプティブクルーズコントロールでは、電波センサーが前方または側方に向けて電波を照射し、その反射波から周囲の車両や障害物の位置や移動速度を測定します。

これにより、一定の車間距離を保った走行や、死角にいる車両の検出などが可能となり、ドライバーの安全を支援します。

  • 車両距離測定

高速道路走行時の車間距離維持や自動ブレーキシステムにおいては、電波センサーが継続的に前方の車両との距離を測定しています。

センサーが発信した電波が対象物に反射して戻るまでの時間をもとに、リアルタイムで距離を計算し、必要に応じて減速やブレーキを制御します。これにより、事故のリスクを低減し、安全な運転をサポートします。

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建設・インフラ業界

  • 建設機械の安全監視

建設現場では、重機やクレーンの周囲に電波センサー(ミリ波レーダーなど)を設置し、周囲に電波を発信して反射波を検出することで、人や障害物の位置や距離をリアルタイムで把握します。

これにより、作業者が重機の死角に入っても即座に検知でき、警告を発して事故を未然に防ぐ安全監視システムとして活用されています。

  • 構造物の監視

橋梁や高層ビルといったインフラ構造物に電波センサーを設置し、微細な変位やひずみを高精度にモニタリングします。

センサーが定期的に構造物に向けて電波を送信し、反射波の変化を解析することで、構造のわずかな動きや劣化兆候を検出。これにより、異常を早期に察知し、補修や点検の判断材料とすることができます。

  • 地盤調査

建設予定地において、地中に向けて電波を照射し、地層や埋設物からの反射波を分析することで、地下の構造物や障害物の存在を把握します。従来の掘削を伴う調査に比べて非破壊・高効率で地盤状況を可視化でき、設計や施工時のリスクを大きく低減します。

エネルギー業界

  • 油田・ガス田の監視

油田やガス田に設置された電波センサーは、配管やバルブ、貯蔵タンクの表面に電波を照射し、その反射波の変化を検知することで、設備の状態を非接触で監視します。

圧力変動や腐食、漏れなどの兆候を反射波から読み取ることで、異常の早期発見につなげることができ、事故の防止や保守作業の効率化に大きく貢献します。

  • 発電所の設備監視

発電所では、タービンや配電設備、冷却系統などに電波センサーを設置し、設備の動作状況や振動、温度変化などに伴う構造のわずかな変化をモニタリングします。センサーが常時電波を送信し、反射信号の変化を解析することで、故障の兆候を事前に捉え、予知保全の実施や稼働停止リスクの低減を可能にします。

他のセンシング技術との違い

iotロボット

電波センサーは、産業分野における自動化や設備モニタリング、品質管理などで広く活用されているセンシング技術の一つです。これらの用途では、光学センサー、超音波センサー、赤外線センサーなども同様に使用されており、それぞれに異なる特性や利点があります。

以下の表では、それぞれのセンサーの検出対象、特徴・利点、欠点、主な産業用途を比較しています。

センサー技術検出対象特徴・利点欠点主な産業用途
電波センサー (マイクロ波、ミリ波)距離
速度
動き
障害物
視界に依存せず、
悪環境でも安定して機能。
長距離測定に優れ、霧や煙、粉塵などでの障害物検知が可能。
精度が低下する場合がある(特に小さな物体や薄い物体)自動運転
工場の自動化
在庫管理
水位監視
障害物検知
光学センサー物体の位置
距離
形状
カラー
高精度で視覚的な情報を提供。
比較的安価で広範囲に使用可能。
環境光や反射に影響されやすく、視界が遮られると動作不良を起こす。生産ラインの品質管理
パッケージング
医療機器
物流管理
超音波センサー距離
物体の位置
障害物
短距離で高精度な測定が可能。
音波を利用して測定するため、低コストで利用可能。
温度や湿度に影響を受け、長距離測定には不向き。
障害物や表面の形状に依存。
タンクの液位測定
障害物検知
在庫管理
赤外線センサー物体の温度
熱放射
温度変化に敏感で、熱源の検出に優れ、非接触での温度測定が可能。温度変化がない物体には反応しにくく、物体表面の材質によって感度が変わる。防犯
温度異常検知
スマートホーム
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まとめ

電波センサーは、電波の特性を活かして物体検出や距離測定、環境監視などを高精度かつ非接触で実現する技術です。

マイクロ波やミリ波を用いた多様な方式により、製造業や自動車産業、インフラ分野など幅広い領域で導入が進んでいます。他のセンサー技術と比較しても、悪環境下での安定性や応用範囲の広さが強みであり、今後も活用の幅がさらに広がると期待されます。

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